2020 Fiscal Year Research-status Report
学習者オートノミーを育むICT双方向授業活用による日本語教員養成プログラムの研究
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20K00716
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
安原 順子 神戸女子大学, 文学部, 教授 (40309430)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | reflective journal / 学習者オートノミー / 自律的な学習 / ICT学習プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神戸女子大学と提携校であるニュージーランドのオークランド工科大学(以下AUTと略す)間で、AUTonline(AUTが管理するe-learningシステム)を使用した双方向授業として、研究対象となる授業の試行と連携教育を3年間行う研究である。3年目を研究完成年度とした。大学3年生を対象に、1年間に2種類の授業を行い、授業を通した日本語指導者の育成方法とreflective journalを質的に分析した結果から学習の有効性を検証する。reflective journalをeポートフォリオの一部として活用し、質的に分析する。また、eポートフォリオの内容をチェックし、必要な助言を与えることで、効果的に日本語教員を育成する方法論を明らかにする。 令和2年度(2020年度)は、学生がeポートフォリオに提出した対象となる授業のreflective journal、指導案、レポートなどを分析し、自己評価、相互評価、教師による評価を行った。双方の学生は、以下の授業に参加し、毎週各自が学習を自己評価して、その結果をreflective journalとして、双方向授業ではAUTonlineに提出、常時「学習の振り返り」を行った。神戸女子大学学生は、外国人日本語学習者の使用する日本語から、文法・音声の誤用についてレジュメにまとめて授業で発表し、eポートフォリオとして神戸女子大学online manaba(神戸女子大学が管理するe-learningシステム)に提出した。その際には、AUTオンライン上の交流ブログから、誤用を、抽出し訂正するという積極的にフィードバックの方法を取り入れ、新たに今後の研究の目標とした。今後も、プログラムにはこの手法を取り入れ、日本語教師として「自分で学んで行ける学生」を育てるプログラムを構築する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、特に学生へのフィードバック研究を主体とした。学生には、授業の一環として、双方向授業が終了してから担当するAUT学生の日本語を分析し授業で発表することとしている。AUTオンライン上の交流ブログや音声によるビデオレターの交換から、誤用を、抽出し訂正することができた。例えば、AUT学生とのオンライン上の交流から次のような誤用の例が見られる。「とても恥ずかしいでした。」「少し話しやすいでした。」「だから、答えるのがよく遅いでした。」などである。 誤用の文章を訂正するに当たり、このAUT学生には日本語についてどのような特徴が見られるだろうか。誤用の訂正は、日本語母語話者にとっては慣れればそれほど困難ではない。しかし、そこから学習者の誤用の特徴を見つけ日本語教育に応用する力は、改めて伸ばすしかなく、教授者としての学習者オートノミーの育成に繋がる。 前出の誤用文の理由は文法規則の「過剰般化」によるものである。「誤用 恥ずかしいでした。 → 訂正 恥ずかしかったです。」 い形容詞の過去形は、通常、次のような形の変化をする。「恥ずかしい → 過去 恥ずかしかったです」。「い」を削除して、「かったです」を付与する。ところが、このAUT学生は名詞の過去形作成と同じく、原形に「でした」を付与している。「雨 → 雨でした」、「恥ずかしい → 恥ずかしいでした」となっていた。神戸女子大学学生は、これらの発表を通して、誤用について同様の理由が適用でき一般化できるということが分かった。フィードバックの手法を発表学生が理解でき、日本語教員の資質の向上に役立ったと考えられる。学生の発表には、次のようなメリットもあつた。(1)レジュメによる発表をすることにより、レジュメの書き方、レジュメを使用した発表の方法が分かる(2)さまざまなAUT学生の日本語能力に関する情報を共有し、一般化できる分析力が育つ
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Strategy for Future Research Activity |
前年度実施の反省点を踏まえて、修正したプログラム内容を検討し、研究の対象とする。前年度と同様に、双方向授業、模擬実習、日本語チューターなどを行う。1年間に2種類の授業を行い、授業を通した日本語指導者の育成方法とreflective journalを質的に分析した結果から学習の有効性を検証する。reflective journalをeポートフォリオの一部として活用し、質的に分析する。また、eポートフォリオの内容をチェックし、必要な助言を与えることで、効果的に日本語教員を育成する方法論を明らかにする。令和3年度(2021年度)は、学生がeポートフォリオに提出した対象となる授業のreflective journal、指導案、レポートなどを分析し、自己評価、相互評価、教師による評価を行う。年度末には、研究計画遂行の検討と同時に、研究代表者が海外研究協力者とともに研究成果をまとめる。 誤用の文章を訂正するに当たり、AUT学生には日本語についてどのような特徴が見られるだろうか。誤用の訂正は、日本語母語話者にとっては慣れればそれほど困難ではない。しかし、そこから学習者の誤用の特徴を見つけ日本語教育に応用する力は、改めて伸ばすしかなく、教授者としての学習者オートノミーの育成に繋がると考えられる。 研究代表者は研究成果報告書の刊行とともに、国内外での成果発表を行う。ICJLE2020香港・マカオ日本語教育国際研究大会での発表を予定している。
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