2020 Fiscal Year Research-status Report
非母語話者の文語文学習支援のためのシラバス・教授法の開発および研修システムの構築
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20K00720
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 勢紀子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 名誉教授 (20205925)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文語文教育 / 非母語話者 / オンライン教材 / ブレンディド・ラーニング / オンライン研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 2017年度開始の科研費基盤研究(C)17K02836(2020年度まで期間延長)で開発してきた文語文オンライン教材"BUNGO-bun GO!"の仕上げを行った。一部のテキスト本文について、著作物使用についての許諾を得る手続きを行った上で教材を公開した。さらに、現在掲載されている16編のテキストに加えてテキスト増設を行うための聞き取り調査を行った。 2. 研究代表者および協力者が開講している文語文関連の授業で開発教材を試用し、対面授業と組み合わせたブレンディド・ラーニングの効果的な方法を探究した。 3. 文語文研修システム構築の参考にするため、くずし字教育に関する文語文教育関連の研究集会に参加した。 4. 非母語話者に対する文語文教育に関心を持つ国内外の研究者等を対象に、Web会議システムZoomを利用した「BUNGO-bun project研究会」を2回開催した。第1回研究会は2020年8月に「オンライン化で生じた課題と可能性」というテーマで開催し、プリンストン大学、東京大学、東北大学の事例報告と討論を行った。日本国内21名、国外12名の参加があった。第2回研究会は2021年2月に「オンライン教材を考える」というテーマで開催し、3つのオンライン教材の事例報告と討論を行った。国内30名、国外29名の参加があった。第1回研究会についての報告を大学のセンター年報で公表した。第2回研究会についての報告を国内学会のジャーナルに投稿し、掲載が決まっている。 5. 非母語話者に対する文語文教育の研究ネットワーク形成のため、メールアドレスリスト“bungonet”を作成し、文語文教育や古典研究に関する情報発信を行い、登録者間の相互交流を促進した。2020年度末における登録者数は57名である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020-2021年度の研究計画として、当初、1)年度内に公開予定の文語文オンライン教材の改善・拡充および利用法の検討、2) 文語文研修システム構築のためのワークショップ参加、3) Zoomを利用した文語文教育関連の研究会の開催を考えていた。 このうち1)については、オンライン教材“BUNGO-bun GO!”を改善した上で、残っていたテキスト本文の著作権の問題を処理し、公開に至ったこと、また、留学生を対象とする文語文関連授業での同教材の試用を通じて、その利用法について検討したことで、計画どおりに順調に遂行することができている。教材の拡充については2021年度の課題としてよいと思われる。また、3)についても、年度内に2回のBUNGO-bun project 研究会をオンラインで開催し、順調にスタートを切っている。 一方、2)については、2020年夏にヴェネツィア大学で開催予定となっていたワークショップへの参加を計画していたが、新型コロナ感染症の拡大により中止となり、参加がかなわず、年度内に国内で開催されたオンライン研究集会に参加するにとどまった。 なお、2020年度の研究実施計画としては特に記載しなかったが、研究課題の最終目標である研修システム構築の実現に向けてメールアドレスリスト“bungonet”を作成して運用を開始し、研究ネットワーク作りに着手することができた。 以上より、現在までのところ、ほぼ計画どおりの進捗状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 2020年度に公開したオンライン教材“BUNGO-bun GO!”の拡充を行う。テキストを増設するとともに、これまで要望の多かった朗読資料の作成・掲載を行う予定である。また、Google フォームによるクイズが使用できない利用者のために、クイズのPDF版を作成する計画である。文法学習のポイントをまとめた資料も掲載予定である。また、開発教材の効果的な用法を検討する。特に文語文関連の授業でどのように教材を利用したブレンディド・ラーニングを実現するかを考えていく。研究成果を国内外の学会等で発表する。(2021-2022年度) 2. 初年度に続き、各年度に2回のBUNGO-bun project研究会を継続的に開催していく。今後の研究会のテーマとしては、漢文教育、くずし字教育などを考えている。(2021-2022年度) 3. メールアドレスリスト“bungonet”の運用を通じて、文語文教育に関する情報提供や登録者相互の情報交換・意見交換の場を継続的に提供し、文語文教育に関する研究ネットワーク作りをさらに進めていく。(2021-2022年度) 4. 海外の日本研究拠点大学での文語文研修のワークショップに参加してそのノウハウを学ぶ。得られた知見や教育経験をもとに、国内外の非母語話者を対象とした文語文学習支援のための1-2週間の短期研修のシラバスおよび教授法の開発を行う。(2022年度) 5. 研究協力者が所属する国内および海外の教育機関と連携して、Zoomを利用した文語文学習支援の短期研修を実地に開催し、その効果を検証する。本研究課題の研究成果をまとめ、公表する。(2022年度)
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Causes of Carryover |
1.当該助成金が生じた状況: 研究実績の概要に記述したとおり、新型コロナ感染症拡大の影響により、2020年度には海外における文語文研修ワークショップが開催されなかった。また、発表を行う予定であった国際学会も中止となった。そのため、国外旅費を使用しなかった。また、研究打合せ、国内の研究会への参加等もオンラインで行ったため、国内旅費も使用しなかった。それらの研究計画を次年度に持ち越したため、次年度使用額が生じた。 2.使用計画: 次年度以降に海外でのワークショップへの参加、国際学会での研究発表、国内における研究打合せ、研究会参加等のための旅費として使用する計画である。
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Remarks |
本研究課題で仕上げを行って公開した、非母語話者を対象とする文語文オンライン教材のサイトである。
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Research Products
(10 results)