2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00724
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
桑原 陽子 福井大学, 語学センター, 准教授 (30397286)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 読解過程 / 縦断的研究 / 中上級日本語学習者 / 論文読解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,中上級日本語学習者の論文を読むプロセスの変化を縦断的調査によって明らかにすることである。読解教育において軽視されがちな,正確に構文を捉えて読むボトムアップ型の読みがどのように行われているのかを明らかにし,どのような読みの困難があり,それがどのように解消されていくのかを記述する。 これまでに約4年間にわたり英語圏の中級学習者を対象に論文を読む過程について観察調査を行ってきた。2020年度は,コロナ禍のため新たなデータ収集が困難だったが,2019年度までに収集したデータの整理とその分析を行い,研究成果としてまとめることができた。 まず,論文を読む過程で,学習者が読むのが難しいと感じるものとして,文末表現の理解と修飾構造の把握をとりあげ,具体的な困難点とそれが時間の経過とともにどのように解消されていくのかについて詳細に記述した。文末表現については,論文で用いられる文体(いわゆる「である体」)に不慣れなことと,その教育が中級段階から必要であることを示した。修飾構造については,連絡修飾関係よりも連用修飾関係の把握が難しいことを示した。また,論文を読む際に学習者が着目する点が,単語や表現の意味から文の構造を把握するための手がかりとなる助詞や表現形式へと変化する過程を明らかにした。 また,日本語の読点の役割をどのようにとらえているかを記述し,誤読を回避するために用いられる読点の機能について意識化する必要があることを示した。教育上の問題点として,読点の指導は論文やレポートを書くためには行われるが,読むために読点をどのように利用するかについては整理されていないことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため予定していた読解過程観察調査を実施することができなかった。英語圏学習者の調査は,調査者,被調査者,通訳者ともにコロナ対応のため十分な調査時間を確保することができなかった。また,渡日できない新規留学生が多く,調査対象となる中国人留学生の受け入れができなかったことにより,漢字系学習者の選定は不可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,2020年度に実施予定であった調査を再開する。英語圏学習者,漢字系学習者ともに,オンラインによる調査を実施する。 また,引き続きこれまでの収集したデータの整理と分析を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため調査の実施が困難であったことと,出席を予定していた国際学会が中止となったことによる。
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Research Products
(2 results)