2023 Fiscal Year Research-status Report
Heritage language education fostering high level biliteracy
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20K00731
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐野 愛子 立命館大学, 文学部, 教授 (20738356)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バイリテラシー / 継承語 / Family Language Policy |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は複数言語環境に育つ子どもたちの高度バイリテラシーの育成に資するため、そうしたバイリテラシーの発達を促す環境要因の特定を様々なコンテクストにおいて探り、その比較を通じてコンテクスに依存する部分と普遍的な部分を明らかにすることを目指すものである。より具体的な研究課題としては以下の3つを設定している。 1.海外に暮らす継承日本語学習者、及び日本国内に暮らす英語を母語とする子どもたちとその家族は、高度日英バイリテラシー獲得のためにどのような選択(Family Language Policy, 以下FLP)をしているか。 2. 研究課題1で明らかになるFLPのうち、コンテクストの影響を強く受けるものにはどのようなものがあるか。どのような環境要因がそうしたFLPに影響を与えるのか。 3.研究課題1で明らかになるFLPのうち、コンテクストの影響を受けない普遍的なものにはどのようなものがあるか。 2023年度は、これまでに引き続き大阪在住のガーナ出身の子ども達2名を対象に日英バイリテラシー発達に関わる支援を継続し、学校内外の様々な場面で子どもたちが日本語のリテラシーをどのように獲得していくのか、そして同時に英語のリテラシーの保持にどのように苦戦するのか、その様子を観察した。また、カナダの補習授業校に幼稚園の時点から在籍を続け高校を卒業するまで継続して在籍した結果高度な日英バイリテラシーを獲得した当事者5名にインタビューを実施した。また、8月17日から20日にかけてベルギーで開催されたヨーロッパ日本研究会においてフィンランド、フランス、及びイタリアの研究者と共同でパネル発表「"Feeling at home" in linguistic peripheries of Japan?」を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、新型コロナウィルスの影響を著しく受け、さらにコロナ禍の最中に所属が変わったことなどから研究にとても遅れをきたした。2021年度は若干状況が好転し始め、国内のデータ収集を始められた。この年に始めた大阪在住のガーナにルーツのある子どもたちのバ日本語のリテラシーを獲得し、同時に英語のリテラシーの保持に苦戦する様子を継続的に観察している。この成果について今年度まとめたいと考えている。 また、2022年度から始めた北海道のオルタナティブスクールに子どもを通わせる保護者のFLPについても、今年度も継続して調査を行い、その成果をまとめたいと考えている。 国外の調査については、昨年ベルギーで開催されたヨーロッパ日本研究会においてフィンランド、フランス、及びイタリアの研究者と共同でパネル発表「"Feeling at home" in linguistic peripheries of Japan?」を行った際に広がった人脈を活用し、今年度はドイツでのデータ収集を予定している。 また、昨年の年度末に、カナダの補習授業校に幼稚園の時点から在籍を続け高校を卒業するまで継続して在籍した結果高度な日英バイリテラシーを獲得した当事者5名にインタビューを実施できたことは大変幸運だった。このインタビューの結果について、これまで未発表だったデータとの比較を行って成果をまとめたい。 現時点での論文発表としては、「文化的言語的に多様化する教室における英語教育実践 ― トランスランゲージング・クラスルームを枠組みとして ―」と題するものを母語・継承語・バイリンガル教育学会紀要にて発表している(岩坂・櫻井・佐野, 2023)。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は最終年度にあたるため、これまでの研究成果を取りまとめてその成果を発信することに重点をおいて研究を進める。ただし、研究序盤でデータ収集が遅れた分を取り戻す必要もあるため、今年度も引き続き国内外(現時点でドイツ、北海道、青森を予定)でのデータ収集も行う。 研究成果の発表は、学会発表に間に合うものは学会発表し、そのほかの成果については、研究終了後の公表になる物を含めて論文の形で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究が始まって数年コロナの影響でデータ収集や研究成果発表のための海外出張が計画通りに行えなかったことによる予算執行面の遅れがまだ残っているため次年度に積み残している。ただし、2024年度はドイツでのデータ収集、北海道、弘前市でのデータ収集を含む国内外の出張を予定しており、そこで集められたデータの整理や翻訳などに人件費もかかることが想定され、そのためにこの予算を執行していきたいと考えている。
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