2022 Fiscal Year Research-status Report
Developing a collaborative portfolio of intercultural heritage for online exchange in Spanish as a foreign language
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20K00741
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
Cecilia・N Silva 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (40361208)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 異文化コミュニケーション / 文化遺産 / 文化モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年に実施した研究では、文化遺産の概念の理論的枠組みをつくり、それを異文化間コミュニケーションモデルと組み合わせることに焦点を当てた。複数の著者による定義を分析した結果、文化遺産とはすなわち、価値観、信条、知識と変遷、また時間経過のなかでの人々と場所の相互作用から生じる環境のあらゆる側面の考察及び表現として過去から受け継いだ資産であるという特性が同定された。文化遺産の内容を扱うにあたって、主に使用したのは「文化的人工物と実践の正五角形」モデル(Moran、2001)である。 文化遺産の概念については、2022年7月に開催された教育と新学習技術に関する国際会議EDUlearn22の会報に掲載された論文『文化遺産の概念に基づくスペイン語プロジェクト』で定義の整理統合を行い、2022年9月にオンラインで開催された第2回JALT分野別研究部会「語学教育における異文化コミュニケーション」会議における研究発表「文化遺産の概念に基づくポートフォリオ」で、実施したプロジェクトの一部について述べた。 異文化間コミュニケーションモデルに関しては、現在までに提案されたモデルの詳細な報告書を作成し、それらを隠された文化についてのモデル、言語と文化の統合を重視する傾向のあるモデル、そして文化遺産モデルという3つのカテゴリーに分類して、その理論的枠組みに基づく実践的活動を提案して『言語と文化教育における伝統的モデル及び新型モデル』を2022年11月に開催された第48回JALTで発表した。 理論とモデルの組み合わせによって、オンラインプログラムでの多種多様な活動が実現した。本研究は文化遺産の概念に焦点を当てたものであり、文化的現象に関する基礎的見解は、学生が自分たちの文化遺産に対する知識と認識を持つことから始めて、世界に対する意見を構築できるよう導くためのものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際、本研究は以下の理由によりかなり順調に進んでいる。 1.豊富な資料により、遺産の概念の研究を完遂した。また異文化間コミュニケーション能力についてのモデルを使用して活動を設計し、簡単な言い方で複雑な内容を伝えられるよう学生を指導することが可能になった。さらに、全国語学教育学会分野別研究部会「語学教育における異文化コミュニケーション」(JALT ICLE SIG)会議で、異文化間理論をいかに教室での活動に適用するか、どのような要素があればひとつの場所及び/または物が文化遺産と考えられるかについての議論に参加した。 2.オンライン異文化交流モデルの実施について、被験者は東北大学でスペイン語の特別コースを受講する学生である。これによって活動の頻繁な評価と修正が可能になる。加えて、過去の国際会議や東北大学の交流プログラムを通じて、自分が教える学生を日本人のスペイン語学習者との異文化間交流に参加させることに関心のある日本語教師と接触した。さらに、2021年に行った東北大学の学生とカスティーリャ・ラ・マンチャ大学の学生との試験的な交流により、オンライン活動を立ち上げるための豊富な経験と詳細な情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終段階では、ストーリーテリング及び共同読書というふたつの学習と組み合わせた異文化間交流のためのテーマとして遺産の概念に焦点を当てる。我々はすでに異文化間交流における文化遺産の関連性と、活動を設計し、複雑なテキストに単純な方法で取り組む方法を学生に指導し、実施した研究を分析するためのモデルの有用性を明らかにした。2023年度は以下のふたつのタスクを並行して行う。 (1)2022年度に実施した異文化間交流のオンラインプログラムと対面プログラムの結果の分析。結果は全国語学教育学会分野別研究部会2023年次大会(京都産業大学、5月12~14日)で発表する。(2)他大学の学生との交流におけるストーリーテリングと共同読書の活動に文化遺産の概念を適用している。これをもって、活動並びに学生の交流及び共同作業の完全なポートフォリオを作成中である。これらの活動結果は8月にブルゴス大学で開催される第33回ASELE(外国語としてのスペイン語教育学会)国際会議と11月につくば市で開催される全国語学教育学会国際大会で発表する予定。さらに、異文化間交流における文化遺産に関するプロジェクトの詳細な論文は高度教養教育・学生支援機構紀要第10号 2024年に投稿する。 そのため、2023年度予算は主に交流体験の実施と文化遺産ポートフォリオを完成させるために使用する。また、会議参加費用やティーチングアシスタントへの支払い、論文の校正にも割り当てる。
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Causes of Carryover |
2022年度予算の一部が使用されず、2023年度予算に繰り越される主な理由は、COVID-19のパンデミックにより、参加を予定していた国際会議が全てオンライン開催となったほか、学生が大学に集まれず、交流やポートフォリオ作成用に入手予定だった電子ボードを購入しなかったためである。2022年度は依然として、大学での集合にはある程度の制限があった。そのため電子ボードの代わりに、会議室に設置された大型モニターを使うこととし、学生は構内でもネット接続でも参加できることとした。 予算が必要となるタスクは次の通りである。a)ストーリーテリングと共同読書タスク及びポートフォリオ作成の最終段階を手伝うティーチングアシスタントの雇用並びに校正及び翻訳費用、b) 2023年度中に実施した活動結果の発表を目的として2つの主要国際会議、スペイン・ブルゴス大学で開催される第33回ASELE(外国語としてのスペイン語教育学会)国際会議とアリゾナ大学で2024年2月22~25日に開催されるICC(異文化理解能力会議)2024に参加、c)ストーリーテリングと共同読書及び文化遺産に関する新しい見解や提案を得ることを目的として、10月にダッカのプレシデンシー大学で開催される全国語学教育学会ティーチャーズ・ヘルピング・ティーチャーズ研究部会で英語教師のためのワークショップを主宰する予定。
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