2020 Fiscal Year Research-status Report
Research Project on Plain Languages for Social Implementation
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20K00770
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
臼山 利信 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50323225)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | やさしい言語 / やさしい日本語 / 言語サービス / 多言語対応 / 地方自治体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「やさしい言語」研究の基盤を構築する第一歩として、従来の優れた「やさしい日本語」研究の成果と蓄積を踏まえて、国内外における「やさしい言語」研究の必要性・可能性とその課題を明らかにすることである。 第1年目は、日本の自治体全体の言語サービスにおける傾向と課題を究明するための基礎的研究として、47都道府県、20政令指定都市、23特別区の多言語対応状況を調査した。主に公式ホームページ等で使用できる言語の数や種類、対応方式や創意工夫などの特徴を整理した。 その結果、(1)各自治体の閲覧可能言語数が4言語以上あること、(2)閲覧可能言語数を4言語から8言語に設定している自治体が多いこと(42都道府県、14政令都市、20特別区)、(3)自動翻訳サービスを活用して90言語以上に対応する自治体が3つあること(大阪市、神奈川県、台東区)、(4)「やさしい日本語」を閲覧可能言語に設定している自治体が3都県(東京都、埼玉県、長野県)、3政令指定都市あること(横浜市、名古屋市、堺市)、(5)多言語対応の方式として4つのタイプ(各言語専用のホームページを用意する方式、自動翻訳サービスに委ねる方式、その両者を組み合わせる方式、指定の言語に予め翻訳したpdfファイルをホームページからダウンロードさせる方式)があること、(6)創意工夫として、多言語(英語、中国語、韓国語、ロシア語)の自動音声読み上げ機能を用意していること(北海道)、自動音声読み上げテキストにローマ字でルビを表示できること(神奈川県)、(7)課題として、自治体間の多言語対応情報の共有が十分になされていないこと、英語以外の外国語による情報の質的・量的向上が求められていること、多言語対応の効果の検証が不十分であること、などが判明した。 以上の諸点は、多様な「やさしい言語」研究の基盤構築に役立つ知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、本務校での担当授業のオンライン化に伴う教育関連業務等が激増し、研究活動に割ける時間が相対的に下がったこと、国内の移動や対面コミュニケーションに大きな制限が生じたことで、調査対象の自治体を訪問し、聞き取りインタビューなどのフィールドワークを十分に行うことができなかったことなどから、当初の研究計画を変更せざるを得なくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
オンラインでできる研究活動の質を上げることに注力する。具体的には、研究補助員を活用し、オンラインで収集・整理できる情報・資料の分析を積極的に進める。それとともに、多様な言語の研究協力者たちとの研究会を活発に組織・運営し、議論を深化させ、それぞれが持つコロナ禍での経験値を共有する。令和3年度もフィールドワークが十分にできないことを想定し、オンラインによる聞き取りインタビューの可能性も探る。また、計画に則って自治体の防災ハンドブック、生活支援ハンドブックの「やさしい日本語」の分析と考察を可能な範囲で進めていく。このように研究活動の工夫などを通して、フィールドワークの実施が制限を受けている状況を少しでも緩和・克服できる方策を取っていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で予定をしていたフィールドワーク調査を実施することができなかったため。 コロナ禍が収束し次第、調査対象の自治体を訪問し、インタビュー調査等を実施するとともに、研究補助員を雇用し、データ収集と分析作業の効率化を図るための経費にあてがう予定である。
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