2021 Fiscal Year Research-status Report
Embodiment as a means of speech-context grounding: EFL activity development and conversation analysis using improvisational drama
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20K00780
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
三野宮 春子 大東文化大学, 文学部, 特任准教授 (90632406)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 身体化 / マルチモーダル分析 / 相互行為 / 即興 / 英語スピーキング活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外国語学習者が相互行為を行う際に、身体化を一つの資源としながら文脈と発話の接地をいかに達成しているか解明することを目的とする。その手掛かりを得るために、主に即興劇(インプロ)の手法を応用して相互行為を活性化させたアクティビティのデータをもとに、会話分析、特にマ ルチモーダル分析を用いて実際の相互行為の詳細を微視的に描写する。 伝統的な外国語学習においては(コミュニケーション重視を標榜する教授法の運用においてさえ)、現実世界で動きや働きを伴って具体的な事象を指示する真正な言語使用とは乖離した、抽象的な記号体系としての言葉が交わされることが多い。これを修正し、対話的な相互行為の体験を提供するためには、言葉(記号)と具体的な指示対象(意味)、そして特定の文脈において発話がもたらす影響(機能)を接地させる身体化を促す外国語アクティビティの開発と、そこで生成される相互行為の分析が重要である。2020~2021年度は、身体化や会話分析に関する文献調査に進展があった。また、自作カードゲームWhat a day!!の談話分析、4行シナリオやインプロワークExitに関してゴフマンの参与枠組みやマルチモーダル分析を用いて行った実証研究論文を発表した。さらに、form(統語論や音韻論等)- meaning(意味論)- use(語用論)の三項関係のダイナミズムに関して、身体化という視点を加えることによって更新することができた。 COVID-19感染症拡大による研究活動への影響は大きく、新規データの収集や研究会への参加が限定されている。このため、過去に収集していたデータの中から分析対象を選定したり、アクティビティ開発の目標をオンライン使用が可能なものへと変更することによって対応しつつ、研究を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、感染症拡大防止のため、国際学術大会への参加やデータ収集等の活動が制限された。そのような状況ではあったが、文献調査、収集済みのデータ分析、執筆活動等は、計画を柔軟に修正しながら、おおむね順調に進んでいる。特に、マルチモーダル分析を用いて対面相互行為を微視的に記述する方法を採用して以降、言語使用の複雑さに十分に焦点を当てられるようになったことは重要な成果である。 しかし、外国語研究の射程を拡充する必要性が指摘されて久しい現在にあっても、統計的手法を用いて巨視的かつ演繹的に教育実践にアプローチする研究の偏重は顕著で、学術雑誌に投稿しても満足に査読すら受けられず、身体化の問題を扱うのであれば他紙に投稿するように諭され門前払いされる経験を一度ならず味わった。このため、(投稿論文を練り直したのは勿論であるが、)人間科学の他領域では既に「身体化ターンを迎えた」と言われる程その重要性が認識されている課題を外国語教育研究領域でも視野に入れることの意義を説明するために、国内の学術大会において口頭発表も行った。日本の外国語教育関連の諸学会でも身体化に注目が集まるのは時間の問題だと思われるが、本研究がそれを加速させる一助になるよう努力したい。 予算執行に関しては、国際学術大会参加のための経費執行に遅れが出ることが年度当初から予測されたため、当該年度の予算を減額して請求したが、それでも一部が最終年度への繰り越しとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる2022年度は、国内外の移動や研究会等の対面開催の制限が緩和される傾向が、限定的ではあるが見え始めている。このため、感染症対策に留意しつつ、研究目標の達成に必要なものを厳選したうえで、国内外の移動を伴う対面式の研究会への参加等を再開する予定である。また、コロナ禍の影響で拍車がかかったICT活用推進の流れを受け、「身体性」の解釈を描画等を用いた身体的表象へと拡張して、言語活動の可能性を具体的に考察したい。
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Causes of Carryover |
感染症の流行に伴い国内外の移動が制限されたため、学術研究会等の参加を目的とした予算項目において執行を延期せざるを得なかった。
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