2020 Fiscal Year Research-status Report
縦断的コーパスを用いたスピーキング力の発達プロセスと発達要因に関する実証的研究
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20K00813
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
阿部 真理子 中央大学, 理工学部, 教授 (90381425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 雄一郎 日本大学, 生産工学部, 講師 (00725666)
近藤 悠介 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 准教授 (80409739)
藤原 康弘 名城大学, 外国語学部, 准教授 (90583427)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 英語スピーキング力 / 縦断的コーパス / 学習者コーパス / スピーキングコーパス / 発達プロセス / 発達要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は研究文献の網羅的な収集と整理を行った。それと並行して、前年度までの科学研究費採択課題において、データ収集と総点検が完了した2つのデータのうち、1つ目のデータ分析を開始した。具体的には、高校生の発話を3年間にわたって継続的に収集した縦断的スピーキング学習者コーパス (Longitudinal Corpus of Spoken English: LOCSE)の分析である。
本研究が構築したLOCSEは同じような環境で英語を学習している高校生122名に合計8回にわたって、Telephone Standard Speaking Test (TSST) を受験してもらい、その音声を書き起こした縦断的なコーパスである。これまでの研究において、複雑さ・正確さ・流暢さなどの観点から、縦断的な発話データを用いてスピーキング力の発達が分析されることはあまりなかった。そこで昨年度は、データ収集が完了した時点で、流暢さの発達についての分析を行ったのであるが、今年度は、複雑さの発達についての分析を行った。結果、流暢さと複雑さは同時に発達しているのであり、必ずしもトレードオフの関係にはないということが示唆された。研究成果は、国際学会において発表した。
上述のようにある特定の側面に焦点を当てた分析を行う一方、スピーキング力の発達を多面的に解析する研究も進めた。言語発達の指標となる項目は多岐にわたると考えられているが、語彙・文法・統語・品詞など複数の側面から、学習者言語を概観した研究は多くない。そこで、英語母語話者のレジスター分析で用いられるBiber (1988)の言語項目を利用して、英語スピーキング力の発達を多面的に分析し、発達指標の特定を行った。結果、原因を表す従属接続詞、等位接続詞、強調詞、名詞、前置詞、冠詞、人称代名詞などが発達指標となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に予定していた課題(学習者が辿るスピーキング力の発達プロセスを流暢さ、複雑さなどの側面から分析する)が当初の計画通り進められている。研究成果は、すでに国際学会において発表されており、国内外の様々な研究者、および教育関係者から有益なフィードバックをいただくことが出来た。さらには2021年度にも国際学会において、研究発表を行う予定であり、その準備も進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を全国の中学・高等学校の英語教員が主な読者層であると想定される『英語教育』(大修館書店)において連載する。研究成果を教育の現場に還元するために雑誌記事として書き直す作業を行うことは、研究をさらに推進させるための非常に良いきっかけとなる。今後とも、まずは高校生がたどるスピーキング力の発達パターンを記述し、その記述にもとづきながら、発達の要因を明らかにするという手順を踏みながら、現場への還元を行なっていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、成果発表に関わる国内外の出張、および研究打ち合わせに大きな変更が生じているが、研究の進行状況に合わせて、臨機応変に対応する。
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