2020 Fiscal Year Research-status Report
多言語社会に対応したやさしい日本語を用いた医療通訳養成教材の研究と開発
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20K00866
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
大野 直子 順天堂大学, 国際教養学部, 准教授 (90730367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱井 妙子 静岡県立大学, 看護学部, 講師 (50295565)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オンライン学習 / やさしい日本語 / 医療通訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
外国人診療における言葉の問題はグローバル社会の喫緊の課題であり,医療通訳の重要性はまっている。しかし,話者人口の多い言語以外の言語は医療通訳者,通訳訓練の場共に不足している。医療における言葉の問題について,先行研究により言葉が不自由な患者は診療時にコミュニケーション不全に陥りやすいことが示唆されている(Harmsen et al,2003)。また,言葉の壁が原因で治療に対する積極性に差が生じ健康格差につながるという報告もある(Schouten et al,2007)。各地で医療通訳教育が実施されているが,その教育内容は実施団体によってまちまちであり,研修開催場所は都市部に偏っているのが現状である。時間と場所を問わず学習できる環境を整備するために,医療通訳養成講座で e-ラーニングを取り入れている団体はあるがまだ少数である。また,その内容は一方向的で誰にでも理解しやすいものとはいえなかった。医療通訳教育において,やさしい日本語を用いて作成した e-ラーニング教育システムはこれまでにない。本研究の目的は,医療通訳者養成において肝要となる基本的知識を網羅したe-ラーニング学習教材を,やさしい日本語で開発することである。特に以下の3点を目的とする。1) 国内の既存のやさしい日本語を用いた学習システムを調査する。2) 医療通訳能力開発に必要な学習内容を調査分析し,e-ラーニング学習で可能な部分を明らかにする。3) 医療通訳の人材を育成するために,やさしい日本語を用いたe-ラーニング学習システムを開発する。本研究は多言語の医療通訳者の質保証に寄与し,社会的にも有意義である。本年度は第1段階として、日本における医療通訳者に求められるニーズを,外部機関へのヒアリング調査にて明らかにした。また、全国にあるやさしい日本語を用いた在留外国人向けの医療関連知識の資料を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は,2009年から英語医療通訳教育システム構築に関する研究を実施してきた。2010年施した対面での医療通訳教育研修,また2019年に東京で実施した医療通訳ブレンド学習では一定の効果を得たが,対応言語は英語のみであった。今後はこれまでの研究を基盤にして,多言語の通訳教育に対応する教育をやさしい日本語で可能にすることを目指した。本研究は3段階での実施を想定している。第1段階として、日本における医療通訳者に求められるニーズを,外部機関へのヒアリング調査にて明らかにした。また、することとし、また全国にあるやさしい日本語を用いた在留外国人向けの医療関連知識の資料を調査することとした。第2段階では,第1段階で実施したニーズ調査結果を踏まえて,ARCSモデルを活用したインストラクショナルデザインを行い,シラバスを策定し,汎用性が高く多様な言語話者に受け入れられる教材はどのようなものなのか,在留外国人を対象としたフォーカスグループインタビューにより内容を検討する。第3段階では,開発した教材が多言語の医療通訳志望者に使用可能となるように,Moodleを活用してやさしい日本語を用いた医療通訳教材の内容を検討・作成する。加えて,申請者の以前の研究(科研費スタート支援:2014-2015)で作成した医療用語学習教材のうち,利用可能な部分を抽出し,やさしい日本語による教材の作成を行う。既存の自治体や大学・大学院における医療通訳教育において,試作した教材を用いたテスト運用を実施する。テスト運用後に改善した教材は,通訳者及び通訳志望者が自律的学習に使用出来るようにウェブ上で公開することとした。今年度、第一段階として実施を予定したことがおおむね達成できたため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
第2段階では,第1段階で実施したニーズ調査結果を踏まえて,ARCSモデルを活用したインストラクショナルデザインを行い,シラバスを策定し,汎用性が高く多様な言語話者に受け入れられる教材はどのようなものなのか,在留外国人を対象としたフォーカスグループインタビューにより内容を検討する。第3段階では,開発した教材が多言語の医療通訳志望者に使用可能となるように,Moodleを活用してやさしい日本語を用いた医療通訳教材の内容を検討・作成する。加えて,申請者の以前の研究(科研費スタート支援:2014-2015)で作成した医療用語学習教材のうち,利用可能な部分を抽出し,やさしい日本語による教材の作成を行う。既存の自治体や大学・大学院における医療通訳教育において,試作した教材を用いたテスト運用を実施する。テスト運用後に改善した教材は,通訳者及び通訳志望者が自律的学習に使用出来るようにウェブ上で公開する。
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Causes of Carryover |
2020年度には、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、国内外学会のために出張をすることがかなわなかった。そのため次年度使用額が生じた。今年度以降、状況の変化をみて出張などを再開する予定である。
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