2021 Fiscal Year Research-status Report
教育的介入による音韻認知機能の向上が外国語学習能力に与える影響の解明
Project/Area Number |
20K00896
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
杉田 千香子 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (30837539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 彰 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50779626)
印南 洋 中央大学, 理工学部, 教授 (80508747)
内野 駿介 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (80825456)
清水 遥 東北学院大学, 文学部, 准教授 (20646905)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 英語教育 / 音読 / 音韻認識 / 音韻符号化 / リテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、外国語の音韻認知機能と外国語学習能力の心理学的関係性を明らかにし、外国語学習能力を育成するための教育的介入プログラムを開発することである。文字言語の処理に関する認知モデルでは、言語の音韻情報を正確かつ自動的に処理できることが読み書きや聴解といった外国語を学ぶための基礎力の発達に貢献することを予測している。したがって、本研究では、外国語として英語を学ぶ日本人を対象に、(a) 英語の音韻符号化能力がその後の学習成果をどの程度予測するのか、(b) 音韻符号化能力を向上させる音読指導の構成要素は何か、を解明する。これらの検証を通して、外国語学習能力に関わる認知機能の理論的枠組みと、外国語学習能力の成長につながる音読指導プログラムを提案する。 令和3年度(2年目)は、次のことを報告する。外国語として英語を学ぶ日本人大学生を対象に音読指導を行い、音韻符号化能力と強く関係する次の4つの音声学的特徴 :(a) 音素 (子音・母音) の読み、(b) 音調・強勢・リズムなどのプロソディ、(c) 意味の区切りでポーズを置くチャンキング、及び、(d) 連結・同化・脱落などの音声変化を中心に、音声学的知識の明示的指導や発音矯正といった「文字の読みの指導」を通して、音韻符号化能力がどのように発達するのかを検証した。傾向スコア分析により、各音声項目に対する音読指導の効果量を算出する。さらに,音韻情報に対する意識が向上することで,文字と音の対応関係に対する意識がどのように変化するのかを明らかにする。音韻情報に認知的注意を促す教育的介入が,文字と音の対応といった外国語のリテラシー能力をどのように発達させるかが明らかになる。現在は、傾向スコア分析の結果を論文にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 令和3年度(2年目)は、音韻符号化能力を向上させる音読指導の構成要素を解明することである。1年目の目的「どのような音声学的特徴が音韻認識力にどの程度関わるのか」を計量した結果に基づき、音読指導が音韻符号化能力をどの程度向上させるのかを計量する。 研究方法は、①音韻符号化能力と強く関係する次の4つの音声学的特徴 :(a) 音素 (子音・母音) の読み、(b) 音調・強勢・リズムなどのプロソディ、(c) 意味の区切りでポーズを置くチャンキング、及び、(d) 連結・同化・脱落などの音声変化を中心に、音声学的知識の明示的指導や発音矯正といった「文字の読みの指導」を通して、音韻符号化能力がどのように発達するのかを検証する。②傾向スコア分析により、各音声項目に対する音読指導の効果量を算出する。さらに、音韻情報に対する意識が向上することで、文字と音の対応関係に対する意識がどのように変化するのかを明らかにする。 期待される成果は、音韻情報に認知的注意を促す教育的介入が、文字と音の対応といった外国語のリテラシー能力をどのように発達させるかが明らかになる。 現在のところ、上記の研究内容は概ね遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度(3年目)は、音韻符号化能力の向上が外国語学習能力の発達に与える影響の縦断的調査を行う。これまでの検証結果を総括し、音読指導プログラムを開発する。明示的な音読指導を実施し, 本指導が低次の言語処理能力の向上にどのように関わるか縦断的に追跡調査する。 研究方法は、①2年目の結果を受けて、構築する音読指導プログラムで1年間の教育的介入を行い、介入群と比較群で音韻符号化能力がどのように発達するのか比較検証する。一定期間ごとに、音読課題,命名課題と書き取り課題を実施し、音韻認識力の発達過程を潜在成長曲線モデルで解析する。②上記の データを使用し、音韻符号化能力の発達が外国語学習能力とどのように関わるのかを構造方程式モデリングで検討する。外国語学習能力については、複数の質問紙や、読解や聴解といった外国語リテラシーを扱う。 期待される成果は、認知的・音声学的理論に基づく音読指導プログラムの教育的実行可能性を保証することができる。音韻認識力の向上が外国語学習能力の発達とどのように関わるのかを議論するための実証データを提供できる。
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Causes of Carryover |
前年度は、新型コロナウィルス感染拡大防止の為、参加を予定していた学会がオンラインでの実施となり、旅費等の支出が無くなった。その分を次年度使用額とし、学会参加や研究調査の旅費とする予定である。
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