2020 Fiscal Year Research-status Report
The dawn of the Italo-Japanese relations - Centering on travel journals by Italians exploring inner regions of Japan in the years immediately following the Meiji Restoration
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20K00914
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
BERTELLI GIULIO・ANTONIO 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (60598431)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日伊交流史 / 幕末・明治期 / マティルド・サリエ・ド・ラ・トゥール / 駐日イタリア公使 / 蚕種商人 / 日本旅行記 / ウーゴ・ピサ / ピエトロ・フェ・ドスティアーニ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はコロナウイルス蔓延のため、資料収集などを目的とした出張を行わなかったが、比較的研究活動に集中することができ、初代駐日イタリア公使夫人マティルド・サリエ・ド・ラ・トゥール伯爵夫人(Mathilde Sallier de La Tour, 1838-1911)が1867年から1870年にかけての時期に執筆したフランス語による書簡や旅行記などの日本関係未刊資料の翻刻(英訳、注釈付き)を刊行しました。この刊行物は『The Travel Journals of Mathilde, Contessa Sallier de La Tour into the Interior of Japan, 1867-1870 Including Letters, Notes and Sketches』という題名で、2巻(全610ページ)からなり、第1巻には図版、仏語序文、手稿の翻刻(仏語本文+脚注)、第2巻には英語による序文、本文と脚注の英訳、索引が収録されています。本は国内外で販売されています。 次に、イタリアで出版された学術書には、「I viaggi in Giappone e Cina del semaio Pietro Fe' D’Ostiani tra il 1870 e il 1875 - un memoriale inedito」(イタリア蚕種商人ピエトロ・フェ・ドスティアーニの1870-75年の日本・中国における旅行について―未刊回想録を中心に)という伊語による論文が掲載されました。この論文の中心となる回想録は蚕種商人による希少な記録です。 最後に、2月20日に、東京大学史料編纂所が主催したオンライン国際研究集会『幕末・維新期の日伊関係資料』に際して、「イタリアの古文書館・個人書庫に眠る日本関係史料とその魅力についてー幕末・明治初期を中心に―」という口頭発表を行いました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マティルド夫人の史料を翻刻・編集することによって、本課題の大きな目標が一つ達成されたと思います。 ただし、新型コロナウイルスの蔓延によって、学術専門書の執筆に欠かせない国内・海外における日伊交流史を中心とした史料調査活動は大変困難であるのは事実です。現在、インターネットを通して入手できる史料、以前収集した史料を中心に研究を進め、新型コロナウイルスが収束するに際して、必要な資料調査活動を行いたいと思っております。 幕末・明治初期の日伊交流史を中心とした学術書の執筆活動、ウーゴ・ピサの旅行記の翻刻活動も少しずつ進んでいます。
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Strategy for Future Research Activity |
2021、2022年度に進めたい主な活動は、すでに収集した史料を活用し、幕末・明治初期における日伊交流史(主に外交・貿易史)を中心とした学術専門書を執筆することと、在日イタリア公使館の若いイタリア人書記官ウーゴ・ピサによる回想録の翻刻・註釈活動、そして可能なら、英訳を進めたいと思っております。新型コロナウイルスの蔓延が本年度中に収束すれば、可能な限り史料収集を目的とした旅行を行いたいと思います。 現時点では未定ですが、国内外の主催者が開催するオンラインシンポジウムなどでも研究成果を発表する予定もあります。 さらに、マティルド・サリエ・ド・ラ・トゥール伯爵夫人の史料が上述の出版物によってアクセスがしやすくなったため、可能ならシンポジウムなどで、西洋人女性の目から見た明治維新期の日本を鮮やかに描いた非常に珍しくて、興味深い史料の存在、内容と重要性を国内外の研究者に知っていただければ幸いです。特にマティルド夫人が1869年6月8日から28日にかけて行われた上州・武州地方における養蚕視察旅行に参加した後に執筆した旅行記、そして描いたスケッチがイザベラ・バード(Isabella Bird)の名書『Unbeaten Tracks in Japan』よりおよそ10年早く書かれたものであって、西洋人女性による最古の日本内地旅行記であることが注目に値します。拙著はまた、日伊関係史を中心とした英語(そしてフランス語)による最初の刊行物で、日伊交流史を日本と欧米列強との関係史というより広い枠組みに嵌め込み、国内外の日本外交史研究者、歴史学者、旅文学学者などに少しでも役立つようにしたいです。 今後は必要に応じて東京大学史料編纂所の在外の古文書館に保管されている史料のデジタル化を目的とした企画(科研費・基盤研究A、研究代表者:保谷徹教授)にも協力したいと思っています。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルスが蔓延していることによって旅費を使わず、計画していた以上の物品費、人件費(マティルド夫人の刊行物の仏文・英文のプルーフリーディング費用)を利用し、少額ですが、次年度使用額が発生しました。 2021年度使用額は可能であれば資料調査を目的とした旅費に利用したいと思っておりますが、2021年度も資料調査が不可能であれば、書籍などの物品を購入するために利用します。
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