2021 Fiscal Year Research-status Report
前近代エジプト農村社会の長期持続構造と環境・社会変動へのレジリエンス
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20K00918
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高橋 亮介 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (10708647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀谷 学 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (00586159)
熊倉 和歌子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (80613570)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エジプト / 農村 / 文書行政 / 環境史 / 社会経済史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、前近代エジプト農村部における農業・水利実践と行政の実態を再構成すること、さらに環境的・社会経済的な変動に対して農村社会や国家の諸制度がどのように反応したかを検討することである。今年度も国内外の出張・調査に大きな制約があったが、本研究前半の目標である、前近代エジプト農村社会の静態的な特徴を析出すべく、各自が担当する時代について考察を深めた。 研究代表者の高橋は、著書 The Ties That Bind: the Economic Relationships of Twelve Tebtunis Families in Roman Egypt を出版した。これは史料に恵まれた紀元後2世紀の一村落における地主層と農民との複雑な人間関係を、農地貸借、金品貸借、労働力の組織という3つの観点に注目して、再構築したものである。その結論は今後の前近代エジプト農村社会史研究において、村落のあり方の一つのモデルとして参照されることが期待できる。また『岩波講座世界歴史』に寄稿したローマ帝国社会全体の女性と性差の諸問題を論じた論考においても、エジプト農村部から得られる知見を盛り込んだ。 研究分担者の亀谷、熊倉もそれぞれ、初期イスラーム史の文脈の中でのエジプトの農村部の位置付け、オスマン帝国の支配下における農地管理と農村統治の特徴にふれる論説を執筆した。いずれも前近代のエジプトの静態的な特徴と当該時代の特徴の両方を意識したものであり、2023年度以降に出版予定の『岩波講座世界歴史』の関連巻に収録されることとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行の継続により、昨年度に引き続き、国外はもとより国内の出張・調査の制限があり、また研究時間を十分に割くことが難しかった。しかし、各人が担当する各時代の状況を示すために、これまでに入手した史料と文献を活用して成果発表およびその準備を進めることが出来た。これにより前近代エジプト農村社会の静態的な特徴を析出するという、研究期間前半の目標はある程度達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがって前近代のエジプト農村社会のあり方について一定の特徴を示すことが出来た。その成果とさらなる課題を改めて研究代表者と分担者で共有するとともに、各時代の社会変動・環境の変化が大きかった時期の状況について史料の残存状況と特徴の把握をはじめとする考察を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
出版物の印刷費に本年度の支出額の多くを充てたが、本年度も国内外の出張が不可能な状態であり、前年度から繰り越した分を含めて、次年度使用額が生じた。研究期間を延長することの検討を含め、次年度以降に効率的に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)