• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2022 Fiscal Year Research-status Report

新視点による墨書陶磁器研究とその史料的集成

Research Project

Project/Area Number 20K00924
Research InstitutionMeiji University

Principal Investigator

石黒 ひさ子  明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (30445861)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywords墨書陶磁器 / 泉州南外宗正司 / 泉州市舶司 / 泉州安陽下草埔冶鉄遺址 / 花押印 / 博多遺跡群
Outline of Annual Research Achievements

本研究は研究テーマである「新視点による墨書陶磁器研究とその史料的集成」のため、「綱」字墨書陶磁器への新解釈、墨書陶磁器の文字解釈への新基準、墨書陶磁器の出土地域ごとのデータベース作成という目標を設定している。その基礎となる中国での関連考古学的出土物の実見は本年度も新型コロナウイルス感染症対策のため調査不能であった。しかし、墨書陶磁器資料への情報を収集することで、複数の研究成果を公表することができた。中国泉州の遺跡から発見された墨書陶磁器については「泉州南外宗正司遺跡出土墨書陶磁器について」と「泉州安溪下草埔冶鉄遺址出土の墨書陶磁器について」において検討した。この内容については、セミナー・学会において口頭でも発表した。また墨書陶磁器に見られる花押について以前より見解を発表してきたが、これに関連する花押印について新たな知見を得て「今帰仁城出土銅印について」として発表した。これは花押印や琉球をめぐる貿易においても新たな認識になるものである。
また墨書陶磁器を概観するものとして「中国の墨書陶器・墨書陶磁器」を発表した。墨書陶磁器のデータベース作成については、博多遺跡群出土のデータベース作成を推進した。博多遺跡群では第221次調査で港遺跡に関連する石積み遺構が発見され、その近くからは多くの墨書陶磁器が発見されている。これは非常に重要であるためデータベースはこの第221次調査の報告書までと計画した。しかし第221次調査は報告書刊行が遅れ、報告書は令和5年4月以降の刊行となり、データベース入力作業も完成には至らなかった。データベース掲載予定の博多遺跡群出土墨書陶磁器をすべて実見して確認する総見作業についても、令和4年度までに刊行された墨書陶磁器のリストをもとに実見を開始したが、数量が多く一度に見学することは施設側の事情で不可能であったため、令和5度にも実見作業を継続することになっている

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究の当初の予定では墨書陶磁器の出土データの集成と中国・東南アジア地域で出土した墨書陶磁器の現地実見調査を目指していた。データ集成では博多遺跡群墨書陶磁器集成について福岡大学考古学研究室へアルバイト協力を依頼し、データ入力作業を実施することができ、令和5年1月に報告書刊行が予定されていた博多遺跡群第221次調査までをデータ入力する予定であったが、当該報告書の刊行は遅れ、令和5年4月以降となった。
さらに資料集成刊行にあたり、報告書に掲載された墨書陶磁器全てを実見する総見作業を計画し、一部分は実行できたが、実見する点数が多いことから、管理施設側の理由で実見作業は令和5年度に継続せざるを得なくなった。刊行の遅れや施設側の対応も本質的には新型コロナウイルス感染症への対策によるところが大きい。
以上の理由から計画していた博多遺跡群墨書陶磁器資料集成は令和5年度完成として、研究計画を延長せざるを得なかった。今後もデータ入力および編集作業には今後も福岡大学考古学研究室の協力を得ており、オンラインによる確認も取り入れて継続し、令和5年度にデータベースの完成と刊行を予定している。
令和4年度には中国の温州で11世紀から13世紀頃の港湾遺跡が発見されたことが公表され、そこから墨書陶磁器が出土していることがメディア報道で判明した。この墨書陶磁器はこれまでに中国で報告されたものと違い、博多遺跡群により近い書写内容を持っている。この理解を推進するためにも国内外の研究者との情報交換に努力し、特に資料集成作業を進行中の博多遺跡群第221次調査結果との比較が重要であると考えている。新型コロナウイルス感染症対策等により海外調査は実施できていないが、令和5年度には海外での調査実施や情報発信を予定している。
以上の理由から、現在までの進捗状況については「やや遅れている」という区分を選択することになった。

Strategy for Future Research Activity

本研究の今後の推進策として、本年度の研究では次の三つの研究計画を考えている。
1.博多遺跡群墨書陶磁器資料集成の刊行。博多遺跡群については報告書の公刊が予定されている第221次調査は石積み遺構等中世の港湾遺跡が確認され、多数の墨書陶磁器が出土している。またこの遺跡は昨年度発掘が報告された中国浙江省の温州で出土した港湾遺跡との関係においても非常に重要である。墨書陶磁器集成の作業は令和3年度より開始し、本年度も同様に福岡大学考古学研究室に協力を依頼して、博多遺跡群第221次調査分までのデータ集成を刊行したい。
2.海外への研究発信。本年度には国外での成果発表に取り組みたいと考えている。具体的な報告内容としては泉州安渓青陽下草埔冶鉄遺址や泉州南宗正司遺址、泉州市舶司遺址から出土した墨書陶磁器についての研究成果の報告、またそこから海外交易へと視点を発展させた鉄の貿易に関わる研究について国内だけでなく国外にも発信をしていきたい。
3.墨書陶磁器の史料的発展のための調査。墨書陶磁器を史料として活用するための研究の中で、以前より墨書内容にみられる「花押」に注目し、昨年度には沖縄・今帰仁城で花押印を発見することができた。この印は発見されて時間は経過しているが、その意味には気が付かれていなかった。墨書陶磁器には「花押」が多いため、私は以前より花押印資料を収集してきた。そのため今帰仁城の印が花押印であり、中国に同伴印が存在することを突き止めることができた。これは貿易習慣を考える上でも大きな発見であり、他に同様な資料を探す必要がある。そのため宋元時期の中国との貿易が盛んであった九州・沖縄地方や中国本土、東南アジア等海外において墨書陶磁器出土状況とともに関連する遺物についての調査を実施したい。また加えて、これらの貿易行為に関わっていた人的関係や具体的人物についても研究視野を広げて行きたいと考えている

Causes of Carryover

本研究の予定では、中国・東南アジア地域で出土した墨書陶磁器の現地実見調査により、墨書陶磁器の出土データの集成を目指していたが、新型コロナウイルス感染対策により海外調査の実施は令和5年3月ころまで難しい状況にあった。これにより旅費に次年度使用額が発生した。資料集成においては海外調査ができない状況から、国内資料である博多遺跡群墨書陶磁器資料集成の作成を優先して開始した。このデータ集成のためのアルバイトは博多遺跡群に近く、資料が充実している福岡大学考古学研究室へ依頼した。博多遺跡群第221次調査の重要性から、当初よりデータ集成は第221次調査報告書までを対象とすることを計画した。報告書は令和5年1月刊行予定となっていたが、これも刊行が遅れ令和5年度前半となった。資料集成刊行にはデータ集成した資料を実見する必要がある。そのためデータ集成が終了した資料について、実見調査を計画し令和5年2月内に調査を実施した。だが資料が多数であることから、管理施設側の理由で実見調査を二回に分割することになり、二回目は令和5年度夏期の予定となった。この状況によって、人件費や研究費全般において次年度使用額が生じた。刊行の遅れや管理施設の問題も本質的には新型コロナウイルス感染症対策による対応に起因するものといえる。本年度は海外での資料調査及び海外での情報発信を行い、データ集成を完了させで資料集成を刊行させたい。

  • Research Products

    (8 results)

All 2023 2022 Other

All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (5 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Int'l Joint Research] 江蘇師範大学中華家文化研究院(中国)

    • Country Name
      CHINA
    • Counterpart Institution
      江蘇師範大学中華家文化研究院
  • [Journal Article] 中国の墨書陶器・墨書陶磁器2023

    • Author(s)
      石黒ひさ子
    • Journal Title

      墨書土器と文字瓦ー出土文字資料の研究ー

      Volume: 1 Pages: 171-184

  • [Journal Article] 今帰仁城出土銅印について2023

    • Author(s)
      石黒ひさ子 王麗
    • Journal Title

      なじまぁ

      Volume: 13 Pages: 18-21

  • [Journal Article] 泉州安溪下草埔冶鉄遺址出土の墨書陶磁器について2023

    • Author(s)
      石黒ひさ子
    • Journal Title

      国立大学法人岩手大学平泉文化研究センター年報

      Volume: 11 Pages: 63-76

  • [Journal Article] 宋元保伍制的実物見証 福建安溪下草埔遺址出土的墨書瓷器2022

    • Author(s)
      石黒ひさ子
    • Journal Title

      大衆考古

      Volume: 105 Pages: 65-72

  • [Journal Article] 泉州南外宗正司遺跡出土墨書陶磁器について2022

    • Author(s)
      石黒ひさ子
    • Journal Title

      南島史学

      Volume: 90 Pages: 25-51

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 泉州南外宗正司出土墨書陶磁器について2022

    • Author(s)
      石黒ひさ子
    • Organizer
      南島史学会第49回研究大会(2022年度研究大会)
  • [Presentation] 泉州安渓下草埔冶鉄遺址出土の墨書陶磁器について2022

    • Author(s)
      石黒ひさ子
    • Organizer
      公開 泉州安渓下草埔冶鉄遺址出土の墨書陶磁器について 石黒ひさ子 平泉文化セミナー第68回例会
    • Invited

URL: 

Published: 2023-12-25  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi