2020 Fiscal Year Research-status Report
近世中後期の在村知識人と文化環境に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20K00932
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
引野 亨輔 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90389065)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 在村知識人 / 文化環境 / 浄土真宗 / 出版文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世中後期に羽前国村山地域における浄土真宗門徒(東本願寺派)の中心的存在であった工藤家の古文書を調査して、同時期の在村知識人がどのような文化環境に置かれていたのかを明らかにしようとするものである。 ただし、今年度はコロナウィルスの流行により、当初予定していた工藤家での史料調査が全く実施できなかった。そこで、工藤家の子孫である工藤益太郎氏が2011年に刊行した『工藤儀七をたずねて』(寒河江印刷)を活用し、ここに翻刻紹介されている工藤家の重要史料について、解読・分析することに努めた。この作業によって、18世紀終わりから19世紀始めに工藤家の当主であった儀七が、どのような仏教書を読んで、自らの教養を形成していたのかが明らかになってきた。 また、同時に、俗人信徒向けに書かれた江戸時代の通俗仏教書についても、その出版状況を調査し、工藤儀七ら在村知識人が読んだであろう仏教書の内容を検討した。江戸時代の通俗仏教書として最も良く知られているのは、浅井了意の浄土三部経鼓吹である。しかし、浅井了意著述の仏教書は、明らかに僧侶が講釈を行う際のタネ本として記されており、俗人信徒がこれを読むのはかなり難しい。そこで、『阿弥陀経絵抄』や『阿弥陀経和訓図会』といった書物に注目し、江戸時代の在村知識人が接し得た仏教知識の概要を探った。また、通俗仏教書といえば、その内容は宗派固有の論理に希薄なものと理解されがちである。しかし、今回の調査によると、江戸時代中期以降には、『正信偈絵抄』など宗派固有の知識に分かりやすい解説を施した仏教書も増えていく。このような通俗仏教書に対する工藤儀七ら在村知識人の読解姿勢が、次年度以降に検討すべき事柄となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウィルスの流行により、予定していた工藤家での古文書調査を全く実施できなかったことが、研究計画が思うように進捗しなかった最大の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた工藤家古文書調査再開の目途はまだ立っていない。ただし、今後は工藤家を古文書調査の実施場所とするのではなく、真宗大谷派山形教務所の一室を借り、古文書の目録作りや写真撮影を行うことにより、調査再開の可能性を探りたい。 また、今後のコロナウィルス流行の状況次第では、今年度も古文書調査を実施できない可能性がある。そこで、江戸時代刊行の通俗仏教書分析も同時並行で進め、こちらの研究成果も積極的に論文化していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス流行の影響により、当初予定していた古文書調査や学会出張が一切実施できなかったため、旅費や古文書読解のアルバイト謝金を使用することがなく、大幅に使用額が少なくなった。 そこで、今年度は個人宅での古文書調査を断念し、借用した古文書を真宗大谷派山形教務所内で写真撮影する方法によって調査再開を目指す。調査再開後は、前年度の旅費と謝金も含めて、速やかな予算執行に努める。
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