2022 Fiscal Year Research-status Report
近世中後期の在村知識人と文化環境に関する基礎的研究
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20K00932
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
引野 亨輔 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90389065)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 在村知識人 / 文化環境 / 通俗仏書 / 宗派意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世中後期に羽前国村山地域における浄土真宗門徒(東本願寺派)の中心的存在であった工藤家の古文書を調査して、同時期の在村知識人がどのような文化環境に置かれていたのかを明らかにしようとするものである。 今年度は工藤家を訪問し、古文書の一部を借用して、目録作成と写真撮影を進めた。目録については、全史料の半分程度に当たる230点の目録取りを終え、写真撮影については、研究遂行に必要と思われる史料の4分の1程度に当たる80点の撮影を終えた。 今回の調査によって分かってきたのは、工藤家の知識獲得ルートが、想定していた以上に多様だという事実である。18世紀後半に工藤家の当主であった工藤儀七は、その生涯において何度も東本願寺を訪れ、高僧の法話を書き取っている。また、京都の書肆から仏書を購入し、刊本を通じて浄土真宗の教えを学ぶ姿も確認できる。もっとも、工藤儀七にとって知識獲得の機会は、高僧の法話聴聞や仏書の購入に限られていたわけではない。彼は京都において篤信的な浄土真宗門徒たちと盛んに交流を行っているが、その際のやり取りも逐一記録されている。俗人同士の話し合いも、知識獲得の貴重な機会だったことになる。また、親鸞旧跡への旅も何度か行われており、宗祖ゆかりの土地に赴くことも貴重な学びの機会であったと分かる。今後は、こうした多様な知識獲得の機会が、工藤儀七のなかでどのように全体的なまとまりを持っているかを解き明かしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば、今年度で工藤家古文書の調査を完了させる予定であったが、コロナウィルス流行の影響によって、全史料のうち半分程度の目録作成を完了するに留まった。もっとも、工藤家のご厚意もあって、無事に調査を再開できたため、1年の研究期間延長を申請し、2023年度には、目録作成と写真撮影を完了させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、夏期に山形県河北町工藤家への1週間程度の史料調査を行い、全史料の目録作成と貴重史料の写真撮影を完了させる。 また、工藤儀七の事例から、江戸時代の在村知識人による知識獲得の特徴を考察し、その研究成果を宗教史系の学会で報告する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス流行の影響によって、予定していた回数の史料調査を実施できなかったため、執行金額が予定よりも少なくなった。 現在は、山形県河北町工藤家への調査が可能となっているため、研究期間の延長を申請し、2023年度に全ての予算を使用し終える予定である。
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Research Products
(1 results)