2022 Fiscal Year Research-status Report
The International Relations at the End of the Edo Period and the Japan's Modern State Formation Process: From the Viewpoint of Europe's Expansion into Asia in the 19th Century
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20K00938
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
田口 由香 長崎大学, 教育学部, 准教授 (00390500)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 明治維新史 / 長州藩 / 薩摩藩 / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀の欧米諸国のアジア進出という国際関係を背景として、日本がいかに近代国家を形成しようとしたのかを解明することを目的とする。 これまで、イギリスによる朝廷・幕府・藩の位置づけを検討してきた。令和2年度は、元治元年(1864)下関戦争前後における、イギリス政府の朝廷・幕府・藩の位置づけ、また、長州藩と薩摩藩による藩士のイギリス派遣をめぐる貿易商社グラバー商会やジャーディン・マセソン商会との関係について検討した。令和3年度は、元治元年下関戦争、慶応元年(1865)条約勅許、慶応2年幕長戦争、慶応3年大政奉還の各段階において、イギリス政府が天皇・将軍の地位をどのように見ていたのかを検討した。これまでの検討をふまえ、イギリスが大名をどのように位置づけ、どのような関係を築こうとしたのか具体的に検討する必要があると考え、当該年度(令和4年度)は、慶応2年幕長戦争における、駐日公使パークスの薩摩藩と宇和島藩の訪問に焦点をあて検討した。研究成果としては、パークスが幕府との条約に反しない範囲で大名を訪問し、大名の諸外国に対する友好を幕府に示すことで幕府が諸外国と大名との貿易を認めることを要求したこと、パークスの訪問は、これまで幕府が大名の諸外国に対する敵意を諸外国と大名との貿易を許可しない理由としてきたことに対して、大名は友好的であり敵意がないことを証明することを目的としていたこと、イギリスは、幕府を条約締結の権限をもつ統治者と認めたまま、大名との貿易による対日貿易の拡大を志向していたことを解明した。 研究成果は、学会報告「慶応二年イギリスにおける大名の位置づけ―駐日公使パークスの薩摩・宇和島訪問を事例として―」(広島史学研究大会日本史部会)、論文「大島口の戦いと伊予松山藩―四国諸藩の出兵状況を中心として―」(『軍事史学』58巻3号)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は最終年度であったが、令和2年度(2020)から続くコロナ禍による影響が残ったため、国内での史料調査は始めることができたが、海外での調査は断念せざるを得なかった。本研究は、日本とイギリス双方の史料を用いるマルチアーカイヴァルの研究方法をとるため、研究は遅れている。 本研究では、ケンブリッジ大学図書館所蔵の英駐日公使パークスの往復書簡などを含む「パークス文書」(Papers of Sir Harry Parkes)、長州藩・薩摩藩と貿易取引関係書類やグラ バー商会などとの書簡類を含む英貿易商社「ジャーディン・マセソン商会文書」(Jardine Matheson Archive)、またイギリス国立文書館所蔵の英駐日公使パークスと英外務省との往復書簡を含む外務省文書(FO46/65他)、パークスと英艦隊キング提督の往復書簡を含む海軍文書(ADM125/119他)を調査収集することを予定しているが、研究1年目の令和2年度からイギリスでの史料調査は実施できていない。そのため、これまで収集していたイギリス史料や、刊行されている史料などを用いて研究を進めてきたが、最終年度として本研究目的の結論を出すには至らず、研究期間を延長させていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる4年目には、本研究の目的である、19世紀の欧米諸国のアジア進出という国際関係を背景として、日本がいかに近代国家を形成しようとしたのかについて解明するため、昨年度行うことを予定していた、慶応3年12月王政復古に至る段階における、長州・薩摩藩とイギリス政府・貿易商社との関係を明らかにすることを計画している。本研究課題の「問い」である、幕末期、日本が国家としての独立を守るために必要な国家体制を模索するなかで「イギリスは日本の政治・社会の大変革に対して長州藩や薩摩藩を支援しようとしたのか、また支援があった場合どのような支援が行われたのか」について、日英史料のマルチアーカイヴァルにより多角的に検討する。 研究の推進方策としては、可能な限り国内外の史料調査を実施する。国内では日本側の史料として東京大学史料編纂所所蔵や外務省史料館など、また、海外ではイギリス側の史料としてケンブリッジ大学図書館・イギリス国立文書館において史料調査を実施する予定である。また、これまでに収集した史料やオンラインで閲覧できる史料、刊行の史料集なども活用しながら、日英各所の協力者から史料や研究の助言をいただくことで研究を進める。 令和5年度(2023)の研究成果は、学会発表や論文投稿などによって発表することを計画している。
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Causes of Carryover |
本研究では国内外の史料調査が中心になるため大部分を旅費として計上しているが、本年度もコロナ禍による影響が残ったため、国内での史料調査は始めたが、海外での調査を行うことができなかった。また、昨年度と同様、国内の学会発表もオンライン開催になったため出張費がかからず、一部はオンラインでの史料収集に必要な機器の購入など物品費に充てたが、次年度使用額が生じた。 今年度は、これまで実施予定だった史料調査を実施するため、可能な範囲で国内外の所蔵機関において調査を行う旅費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)