2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K00945
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
町田 祐一 日本大学, 生産工学部, 講師 (00546260)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本近現代史 / 労働行政史 / 地方史 / 社会政策史 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目の研究計画は、敗戦後の勤労署の業務内容を検討し、戦時・戦後の連続性・断続性を解明するというものであった。当初、研究計画書で予定していた分析対象である長野県須坂勤労署関係資料や北海道庁赤澤文書の分析は実施することができた。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により予定していた遠方への出張が著しく困難となったことに対して、鳥取県立図書館の御協力により、1950年代初頭までの『日本海新聞』の当該時期における新聞記事の収集を実施することができた。さらに、メディア史研究会において、敗戦後の勤労青年たちの動向を扱った最新の福間良明著『「勤労青年」の教養文化史』(2020年)を書評する機会に恵まれ、同時代の就職、雇用状況と教育との関係について知見を深めることができた。 これらの分析から、従来通史的に描かれてきた敗戦後の職業紹介事業については、1945年9月の段階で既に帰郷軍人をはじめ職業紹介を展開することが各市町村に伝えられており、その後復員者の調査などが展開された事実が新たに確認できた。また、10月に進駐軍要求に関わり労務充足が求められたことから戦前の労働力供給事業者を基礎とした労務協会が、勤労動員署が改組された勤労署が設置された経緯が詳細に判明し、GHQから労務協会への批判が出されたことでこれが日雇勤労署の設置に至った経緯も確認できた。 そして、その後勤労署では炭鉱労働者や進駐軍労務への紹介が活気づき、国民学校児童の就職斡旋までが期待されていたこと、他方で求職者が直面した、復員軍人への地域社会の嫌悪感なども確認できた。こうした連続性は1946年4月には連合国労働諮問委員会より勤労署への運営体制への批判がなされ、戦前との連続性が見られる労務供給業者への依存体制が問題として指摘されたことからもうかがえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究活動がやや遅滞した理由は、予定していた史料調査が新型コロナウイルス感染症の拡大、再拡大により、研究者自身及び先方への安全面から、遠方への出張を控えざるを得なかったためである。未知の感染症の拡大と再拡大に伴う、出張の可否については容易に判断しがたく、このことは全く想定外の事態であった。とはいえ、既存史料の再検討および新史料の検索はある程度可能であり、研究活動自体を取りやめるほどの事態には至らなかった。 上記の点を研究計画書の内容とともに具体的に記すと、初年度の研究計画中、長野県須坂勤労署関係資料のほか、既存調査の北海道庁赤澤文書の整理は実施できており、出張を伴う京都府京丹後木津村役場文書、鳥取県大山村役場文書、静岡県立公文書館における文書調査については、次年度以降に繰り越すこととした。また、後述するように設定地域を一都三県に変更することで、具体的な歴史事象の発掘を行うことも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の研究計画は、出張を伴う史料収集において予期せぬ支障が出たことを受け、2年目以降は以下のように展開する予定である。 2年目の研究計画については、GHQの民主化政策から朝鮮戦争にかけての職業安定行政の展開を検討するものである。史料の所在は東京都内に集中していることから、史料収集に際して大きな計画変更は必要がないと考えている。既に一部史料は昨年度収集済みであり、複写依頼は図書館を経由して実施することから、順調な研究継続が予定されうる。 3年目の研究計画については、京都府や鳥取県、静岡県、広島県への出張を予定している。ただし、新型コロナウイルス感染症の拡大、再拡大の状況によってはこれらを断念せざるを得ない。その場合、先方への複写依頼などを含めて柔軟に研究計画の変更を行う予定である。研究課題における地域社会への影響を検討する必要から、地域の再設定を居住地に近い一都三県の中から行うことを考える。その場合2年目の研究計画遂行時点で決定する。
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Causes of Carryover |
初年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により予定していた出張ができなかった。そのため、物品購入に充当したが、図書および古書の購入に際しては差額が生じた。これらは次年度以降適宜当初予定の費用として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)