2021 Fiscal Year Research-status Report
将軍徳川綱吉による山城国善峰寺・金蔵寺再興と地域社会
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20K00949
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
母利 美和 京都女子大学, 文学部, 教授 (60367951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 善峯寺 / 桂昌院 / 徳川綱吉 / 寺院復興 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の調査研究は、母利(研究代表者)と連携研究者梅田千尋(京都女子大学教授)秋元せき(京都市歴史資料館)、野地秀俊(同前)との共同で、本学大学院生を中心にアルバイトとして雇用し、広間脇土蔵保管文書(2350点)の内1000点、寺宝館収蔵庫保管文書(565点)の内300点、昨年度の調査中に新たに確認された文書3000点の内の1000点を追加調査として実施し、のべ2300点を調査した。また昨年度は実施できなかった金蔵寺の所蔵文書ついては、善峯寺での11月調査の際に金蔵寺を訪問し、調査依頼をおこなったが、保管場所の状態、文書の保存状況などが悪く、現時点では調査の許可が得られない状態である。そのため、京都市が把握している金蔵寺文書の画像データ(53点)を、京都市歴史資料館から提供をうけた。 善峯寺での調査は8月下旬、11月上旬、3月上旬、同月下旬の各4日間、4度にわたり実施し、本科研費と連動して進めている研究代表者の所属大学の学内研究費と費用分担をおこない、文書貼付用のラベル作成、調査カードの作成、写真撮影(業者委託)をおこなった。 追加調査として実施した1000点の中には、桂昌院・本庄家との関係から仙台藩の御殿医となった岡村道仙と善峯寺成就坊との間で交わされた元禄期の書状約250点が確認され、善峯寺復興と関連した関係者の動向が窺える貴重な史料であると確認された。 これらの成果の一部は、令和3年11月に京都府立丹後郷土資料館で開催された特別展「“玉の輿”大名家の栄光と苦悩-徳川綱吉・桂昌院と宮津藩本庄松平家-」での講演会で、市民向けの講座として紹介した。 善峯寺文書の調査は、来年度の8月調査でほぼ終わる見込みであり、科研費の連携研究者と協議し、来年度は報告書の刊行に向けて、研究会を3回程度開催することで了解を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本調査開始前に把握していた善峯寺文書の史料調査は順調にすすんでいるが、当初予定の金蔵寺文書は、調査交渉はおこなったが、寺側の事情により調査に入れなくなった。 また、善峯寺文書については、事前調査により3500点程度と把握して調査を開始したが、昨年度の調査により新たに確認された史料3000点の内、昨年度の段階では約800点のみ追加調査する予定であったが、金蔵寺文書の調査が実施出来ないこと、調査を進めていく過程で、その他の史料も本調査で重要な史料群であることが判明したため、残り2200点もすべて調査を実施することとし、総点数6500点の全史料調査を実施することとなった。 そのため、金蔵寺文書の調査が実施出来なかった分、当初予定の調査対象は一部減少したが、善峯寺文書の追加分約3000点の調査のため、全体としては調査対象史料は大幅に増加し、予定外の調査時間を要している。その結果、調査に集中するため、令和3年度に実施予定であった研究会の開催ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年8月に実施する調査で、善峯寺文書のほぼ全容が見えてくるので、令和4年度後半に研究会を3回程度開催し、報告書の原稿作成に着手する予定である。 一方、これまで史料保存機関(柳沢文庫)の事情により調査ができていない、徳川綱吉政権期に側用人を務めた柳沢吉保関係史料については、令和4年度に実施し、研究会の議論の材料に加えていく予定である。 これらの調査・研究会を令和4年度で進めていくが、善峯寺文書約6500点の調書の目録化に向けた写真撮影画像による調書データとの点検作業は膨大であり、令和4年度中には完了できない見込みである。 現段階では研究期間を1年延長し、研究会の成果報告書、調査全史料の目録刊行は、令和5年度に繰り越したい。
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Causes of Carryover |
調査は当初予定以上の数量を実施できているが、調査対象史料が大幅に増加したため史料撮影が遅れていること、コロナ感染拡大状況により遠隔地の連携研究者の調査への参加見込めないため、支出できない額が生じている。 来年度は、調査した全史料の目録化に向けて、調書の点検をおこなうため、とくに一紙文書については全史料の写真撮影が不可欠であるため、8月調査、11月調査により計画的に実施する予定である。
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