2020 Fiscal Year Research-status Report
歴史GISによる京都の都市景観復原と地形の居住地選択への影響に関する研究
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20K00950
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河角 直美 (赤石直美) 立命館大学, 文学部, 准教授 (40449525)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近代京都 / 郊外の開発 / 景観史 / 歴史GIS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、歴史GISを用いることで、約1200年の歴史を有する京都の居住地域の履歴と洪水の浸水域との関係性を明らかにし、都市の持続性とその規定要因を検討することである。とくに令和2年度には、先行研究の成果のGISデータ(遺跡の発掘地点と遺跡の埋没深度や遺跡の時代などの情報を格納したシェープファイル)をもとに、過去の地形環境について再度復原することにあった。 そのうえで、本年度は、京都の地形環境を復原するための元データとなる遺跡分布を示すシェープファイルの内容を確認した。さらに、20世紀以降の京都について、平安京域とともに、都市周辺の郊外についても地形環境の復原をこころみた。そのため、とくに近代京都の地形復原にかかわる資料(旧地籍図、旧版地形図、都市図)の収集と整備、土地利用を示す資料のGISデータベース化を実施した。 また、令和3年度に予定していた、古地図類の資料の所在確認をおこない、15世紀前後の京都を描いた絵図として「京師地圖 : 全 : 中昔」(国際日本文化研究センター所蔵:データベースにて公開されている)の描画内容の把握に着手し、利用の可能性について検討した。また、17世紀から19世紀にかけて作成された絵図の情報を入手した。それらについても、公開されている画像データを閲覧しつつ、GISのエディタ機能を用いて土地利用の違いを描画するGISデータベースの構築をはじめた。 一方で、上記資料の一部をもちいつつ、京都の旧市街地周辺の郊外における近代の開発履歴の解明を検討した。具体的には、土地条件がよくないといえる都市周辺の開発として、刑務所の立地から博覧会場立地までの経緯などの解明、ならびに洛北「八瀬」の遊園地開発とその経過について、GISデータとともに、収集した絵葉書や旧地籍図などから明らかにした。八瀬の遊園地開発の経緯については『立命館文學』にて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大にともない、フィールドワークの実施にも制限が生じ、また作業の補助をお願いしたいアルバイトの雇用が難しく、地形環境を復原するためのGISデータベースの内容確認について進められたものの、修正や加筆を含む、データの更新・整備とあらたなデータベースの構築の点で遅れが生じてしまった。 一方で、博物館や図書館などの各研究機関において、所蔵する資料のデータベース構築とその公開が進んでいることを受け、本研究が関係する史資料の所在確認に努める結果となった。そのことで、近世以前の京都を描画する絵図の存在を知ることができたことは大きく、研究計画として令和3年度以降に予定していた内容を先に進めることが可能となった。 また、史資料の収集に重点をおいたことで、昨今、古書店などで流布している絵葉書などからも、近代に限られるものの、過去の自然環境について把握できる可能性についても把握できたことは、今後の研究を進展させる糧となった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、過去の自然環境を復原するえで、16~20世紀前半、そして20世紀後半以降についてのGISデータベースの充実をはかり、DEMや復原等高線図の作成をおこなう。また、本研究で重視する、都市域拡大の著しい近世から近代の変容を明らかにするため、近代京都の都市計画に関する史資料、景観を知るための絵葉書・古写真・絵図類などの収集を継続しておこなう。そのうえで、近世初期、中期、後期、明治期、大正期、昭和初期といった時代区分をしたうえで、居住域(土地利用)を示す地図を提示するためのGISデータベースを構築する。 ただし、次年度もコロナ禍の影響で、フィールドワークの実施やアルバイトの雇用をスムーズにおこなえない可能性がある。それに対しては、京都市の全都市域の検討を念頭におきつつ、自然環境と開発との関係性をより明確に把握できる研究対象地域、すなわち、居住域を選択してきた規定要因が崩れたことを提示できるような地域を対象とするなど、ミクロな研究から推進する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大にともない、フィールドワークの実施にも制限が生じ、また作業の補助をお願いしたいアルバイトの雇用が難しく、地形環境を復原するためのGISデータベースの整備・構築の点で遅れが生じてしまった。 2021年度もこの状況が改善されるかどうかはよめないものの、研究の補助を依頼できる人材の確保につとめ、リモートでの作業依頼もできるよう準備をして進めたい。そのための人件費を確保しておきつつ、近年、近代の京都を撮影した古写真や絵葉書などが古書として流通している。それらの資料の購入費にも充てるようにしたい。 また、京都の特性を把握するための比較対象としての各都市のフィールドワークや、絵図の所蔵機関などへの調査については、感染状況を見極めつつ十分に感染対策をしたうえで実施を試みたい。そのための旅費を確保する。
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Research Products
(2 results)