2021 Fiscal Year Research-status Report
歴史GISによる京都の都市景観復原と地形の居住地選択への影響に関する研究
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20K00950
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河角 直美 (赤石直美) 立命館大学, 文学部, 准教授 (40449525)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近代京都 / 歴史GIS / 景観復原 / 景観史 / 水害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、平安京以来の歴史を有する京都の居住地域の履歴と洪水の浸水域との関係性を明らかにし、都市の持続性とその規定要因を検討することにある。日本の都市は沖積平野に立地しているものが多いことから、水害への脆弱性は否めず、居住地の選択は災害対策としても喫緊の課題である。そのなかで、度重なる洪水の被害を受けつつ、約1200年の歴史を築いてきた歴史都市京都における居住地の範囲と洪水履歴との関係性を問うことは、人々の災害への対応を知るうえでも重要である。 2021年度は、とくに鴨川(賀茂川)とその周辺の地形環境の復原を試みることで河川との関係性や居住域拡大のプロセスを検討した。具体的には、近世に作成された古地図や近代以降の旧版地形図類とともに、鴨川あるいは三条・四条・五条の各大橋を撮影した絵葉書(古写真)、ならびに明治期に刊行された写真集も収集し、適宜スキャニングや撮影などでデジタル化を進めて読み解き、天井川化していた鴨川の景観復原を試みた。また、各研究機関にて公開されている四条や三条大橋を描いた名所案内記類にも着目することで、納涼空間の形成とその周辺の土地利用の変化、さらにそこに居住した人々の社会構造なども検討した。河川景観の復原から、鴨川が洪水を招きやすい天井川化した河川であるという特徴が理解されるものの、水量の少ない時期に対応した土地利用(納涼空間の形成)は、現在とは異なる自然の変化と人間活動とのかかわり方を示すものであると推察される。 以上の成果は、学内研究機関における研究会での報告を済ませ、今後はより具体的な洪水対応への意味を問い、学会での発表と学会誌への投稿を行う予定である。引き続き、別途入手している河川の土木工事や都市計画に関わる図面なども含め、鴨川の河川景観の実態をとらえていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、本研究にかかわる史資料や地図類、絵葉書(古写真)の収集については、古書店で流通していたものの入手のほか、各研究機関でのデータベース公開が進んだことを受け、多様なデータが収集された。その結果、近代以降における河川環境の復原と、周辺の土地利用の把握を進展させることができた。 一方、引き続きコロナ禍の影響を受けるなか、史料のスキャニングやデジタル化作業、GISデータベースの構築作業において学生を雇用することが難しかったことから、史資料の整理において遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、過去の自然環境を復原するえで収集した古地図や古写真をさらに読み解き、あらためて16~20世紀前半についてのGISデータベースの充実をはかり、復原等高線図の作成を実施し、古写真などを交えた景観復原を試みる。また、本研究で重視する、都市域拡大の著しい近世から近代の変容を明らかにするため、近代京都の都市計画に関する史資料、景観を知るための絵葉書(古写真)・絵図類などの収集を継続しておこなう。そのうえで、近世、明治期、大正期、昭和初期といった時代区分をしたうえで、居住域(土地利用)を示す地図を提示するためのGISデータベースを構築する。 フィールドワークの実施やアルバイトの雇用をスムーズに行なえないこともふまえ、2021年度に進めた鴨川の河川環境の変化と居住地ならびに土地利用の問題にくわえて、天神川(紙屋川)とその周辺、さらにいわゆる平安京右京に相当する地域を中心として、自然環境と土地開発、土地利用との関係性を問い、近代以降に居住域選択の規定要因が崩れたことを提示するなど、ミクロな研究を推進する。
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Causes of Carryover |
2021年度も新型コロナウイルス感染症拡大にともない、フィールドワークの実施において制限が生じ、また作業の補助をお願いしたいアルバイトの雇用が難しかったことから、地形環境を復原するためのGISデータベースの整備・構築の点で遅れが生じてしまった。 2022年度はこの状況が改善されるかどうかはよめないものの、研究の補助を依頼できる人材の確保につとめ準備をして進めたい。そのための人件費を確保しておきつつ、古書として流通している近代の京都を撮影した古写真や絵葉書などの資料の購入費にも充てるようにしたい。 また、京都の特性を把握するための比較対象としての各都市のフィールドワークや、絵図の所蔵機関などへの調査については、感染状況を見極めつつ十分に感染対策をしたうえで実施を試みたい。そのための旅費を確保する。
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