2023 Fiscal Year Research-status Report
古代~中世荘園史の再構築―土地証文の継承と荘園形成の実態解明―
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20K00959
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鎌倉 佐保 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (60468824)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 荘園 / 開発領主 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、(1)土地証文・荘園関係文書の作成・継承の実態解明のための基礎となる史料データベースを充実させ、個別荘園の文書の継承・伝来について分析を進めた。 また、(2)「開発領主」の由緒の形成を明らかにする作業として、関係史料となる大隅国島津荘関係史料の調査・分析、和泉国黒鳥村文書における平安期の開発関係史料の調査・分析、その他「開発領主」相承系図ほか系図類の調査・分析、その作成経緯をめぐる個別事例の分析をを進めた。 さらに(3)古代~中世荘園史の構築に向けて、今年度は特に摂関期の荘園形成と院政期の荘園形成の実態と形成原理の違いを明らかにするための作業を進めた。具体的には、紀伊国隅田荘・相賀荘、大和国栄山寺領について、現地調査と関係史料の分析をおこなった。隅田荘は10世紀に成立し万寿5年(1028)には不輸・不入権を得て領域型荘園となったが、もともと隅田村を基礎として成立した荘園で、領域認識は存在したものの明確な四至は設定されていなかった。12世紀に隅田荘の西に隣接して鳥羽院御願寺大伝法院領相賀荘が立荘されると、境に位置する妻谷をめぐり境相論が起こる。ここには10世紀に隅田村を基礎に成立した隅田荘と院権力により境を明確化して立荘された相賀荘との荘園形成原理の違い、村を基礎として成立した荘園と四至を設定して成立した荘園の性格の違いが見て取れる。このほか関連する事例とともに摂関期・院政期の荘園形成の実態解明に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
親の介護による研究時間の十分な確保が困難であったため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度で終了予定であった当研究を一年延長した。それによりこれまでの遅延を解消し、予定通り研究を進めることができると考えている。
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Causes of Carryover |
本研究がはじまった2020年度以来Covid-19のため調査ができなかったことが影響しており、また2023年度には介護のため研究時間を十分確保できなかったことにより、次年度使用額が生じることとなった。2024年度は、研究期間延長により当初予定の調査・研究を進めることができると考えている。
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