2020 Fiscal Year Research-status Report
難波・大阪湾岸地域における古代・中世史像の総合的研究
Project/Area Number |
20K00969
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
西本 昌弘 関西大学, 文学部, 教授 (00192691)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 後期難波宮 / 中宮 / 蝦蟇行宮 / 河鹿ガエル / 難波市 / 難波津 / 高麗橋説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は文献史学の古代・中世史を中心に、上代文学・考古学・歴史地理学などの研究手法を統合し、学際的な見地から研究成果を生み出すことにより、古代・中世の難波を中心とする大阪湾岸地域像に再検討を加えることを大きな目的としている。 今年度は第一に、正倉院文書「難波宮例得度注文」の釈文を再検討し、難波宮や平城宮の発掘調査成果を見直した結果、後期難波宮の正殿は大極殿ではなく、中宮と呼ばれていた可能性が高いことを論じた。第二に、四天王寺北方の上本町遺跡の発掘調査成果を踏まえ、『万葉集』などにみえる「河津」「川津」の語義について、上代文学研究者の研究成果を参照した結果、『日本書紀』孝徳紀にみえる「蝦蟇行宮」は近年有力視される堀江(大川)沿岸ではなく、四天王寺北方の高津町に存在したと考えるべきことを説いた。第三に、1980年代以来、通説化している難波津を高麗橋付近に比定する説について、その根拠を逐一洗い直し、また近世初頭の朝鮮出兵(高麗陣)の研究成果を踏まえて再考した結果、難波津高麗橋説の大きな根拠とされてきた大阪の高麗橋という地名(橋名)は、古代の高句麗館(客館)に関わるものではなく、近世初頭の朝鮮(高麗)出兵に関わるものである可能性が高いことを明らかにした。 以上の成果は、これまでの難波を中心とする大阪湾岸地域像にいくつかの修正を迫るものであり、これをうけてさらに大きな成果に結びつくことが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は文献史学の古代・中世史に加えて、上代文学・考古学・歴史地理学などの研究手法を統合した研究成果をめざしているが、今年度はそうした目標をある程度実現することができた。また、難波津高麗橋説を批判することによって、難波津の所在地を改めて検討するための視座を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
古代・中世史料に加えて、考古学・上代文学・歴史地理学などの研究成果を参照するという本研究の手法は、予想外に大きな成果に結びつくことが明らかになった。次年度以降もこの方向性を保ちながら、学際的な研究を進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行のため、東京などへの出張調査をまったく行うことができず、また人件費・謝金も十分に消費することができなかった。コロナ流行が収束に向かえば、出張調査を行うことができるので、翌年度分と合わせて使用したい。
|
Research Products
(4 results)