2022 Fiscal Year Annual Research Report
地域における神話的古代出雲像形成とその歴史的性格の研究
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20K00982
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大日方 克己 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (80221860)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 野見宿禰 / 国引神話 / 伝承地 / 神話由来地 / 出雲国風土記 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度2022度、島根大学の「古代出雲文化フォーラム」において相撲と野見宿禰伝承について講演を行うことになった。野見宿禰伝承も神話的古代出雲像に関係し、その伝承地の形成を明らかにすることも、本研究の目的に合致する。そのため本研究に組み込んで、その成果を講演し、あわせて論文として紀要に発表した。 概要は以下の通り。近代に入って、兵庫県龍野、奈良県桜井市・葛城市・香芝市、島根県飯南町などで、野見宿禰の墓、野見宿禰と当麻蹶速の相撲の場(相撲発祥の地)、野見宿禰が獲得した土地=腰折田、敗者当麻蹶速の塚、野見宿禰の出身地などが形成され、顕彰されていった。それには出雲大社と千家尊福、相撲協会、さらにそれぞれの地域社会の歴史的動向が大きく関わっていた。 昨年度、「国引神話」の近代の問題として、出雲地域から日本、アジアへと拡大する国引神話空間と近代のナショナリズム・戦争の関係を明らかにした。それらとあわせて、神話・伝承空間の形成と神話的古代像の形成を、地域社会と国家の問題として分析することができた。 それとともに、出雲国風土記の空間と神代・古代とつながる地域像の形成の問題についても、天明6年(1786)の内山真龍の出雲踏査と出雲風土記抄、出雲風土記解との関係を検討した。神魂神社の秋上得国や松江藩士福見又八ら出雲の人々から何を聞き、何を見聞したか、それらがどのように出雲風土記解につながっていったのか、そして『出雲風土記解』から『訂正出雲風土記』への影響、『出雲風土記解』の諸本調査から、どのように出雲地域社会へフィードバックされていったのか、また真龍自身の『遠江風土記伝』への影響などを明らかにしていった。 これらを通じて、神話的古代認識と地域空間の形成を、出雲のみならず、ヤマトや、近代日本の帝国的拡大にまで視野を広げて明らかにすることができたと考える。
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Research Products
(2 results)