2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00986
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川尻 秋生 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70250173)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 宣旨 / 綸旨 / 比較古文書学 |
Outline of Annual Research Achievements |
21年度もコロナ禍の影響で、海外に渡航することはでず、また、海外の研究者を招聘した研究会も実施できなかった。一方で、中国の宣旨・綸旨の用例は確実に増やすことができ、宣旨については高麗の事例を多く収集することかでできた。 中国および高麗の宣旨は、皇帝の口頭に基づくもので、日本の宣旨が口頭に基づくという点は、中国の影響を受けていることが判明した。ただし、宣旨が皇帝に独占されるという点は、日本の宣旨とは大きく異なっている。こうした日唐の相違の原因については、引き続き検討する必要がある。 一方、中国の綸旨は、律令や正史のなかにはほとんど見出すことができず、経典など、仏教に関係する史料のなかにほぼ限定されて残されている。このことから、日本の綸旨ということばは、入唐僧によって輸入されたことが推測できるようになった。また、当初は、天皇の命令という一般的な用語であったが、後に蔵人が奉じるという現在の古文書学的な意味合いに転訛したと考えられるようになった。こうした綸旨の特徴は、以前研究した「御教書」の性格とも通底するところがあり、僧侶や仏典により、中国の文書名が日本にもたらされ、定着したという見通しを上書きすることができるようになった。この点が判明してきたことは大きな成果である。 最終年度は、今まで述べてきた研究成果をさらに発展させ、日本の宣旨や綸旨の特色をなおいっそう明らかにしたい。また、東アジアにおける比較古文書学という分野の可能性についても考えてたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外調査、海外からの研究者の招聘については、コロナ禍の影響で未実施であるが、事例は予定どおり収集しており順調。また、研究自体についても当初の計画通りである。 5月21日に開催される東方学会大会のシンポジウム「東アジア比較古文書学の可能性」に参加を依頼され、「宣旨とと綸旨」のタイトルで報告を行うことになった。そのため、現在、鋭意その発表準備を行っているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度であるので、研究成果を社会発信することに努めるとともに、社会状況に照らし合わせて、海外への出張ならびに海外研究者との交流を推進したい。 また、宣旨・綸旨についての事例収集についても引き続き務めたい。 東方学会大会のシンポジウム「東アジア比較古文書学の可能性」で発表予定の「宣旨と綸旨」の「内容を、学術誌に発表したい。 海外との関係については、コロナとの関係によるところが大きい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により、海外渡航ならびに海外研究者の招聘ができなかったため。
|