2020 Fiscal Year Research-status Report
北欧自由基督教宣教団と戦後期日本の社会文化史-グローバル地域文化交流史の記録化
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20K00990
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大谷 渡 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (80340644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋寺 知子 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (70257905)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フィンランド人宣教師と戦後日本 / 青年知識人の精神世界と国際交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
1950年代初めに来日し、京都を中心に宣教活動を行ったキリスト教ペンテコステ派フィンランド人宣教師たちと日本人との文化的社会的交流の史実の掘り起こしに努め、文字資料と口述資料の収集を行った。1950年に京都に入ったフィンランド人宣教師夫妻には、フィンランド語の著書があることがわかり、夫妻の孫夫婦を通じて入手することができた。まず夫の著書(1953年フィンランドで印刷)の読解を進めたことによって、中国共産革命に追われ香港から台湾へ移動、台湾での宣教と来日、日本到着後の堺から京都への足跡等々要になる史実が記述内容の吟味を通して明らかとなった。 1950年来日の宣教師に続いて、52年に京都に入ったフィンランド人宣教師夫妻があり、50年と52年に来日した両夫妻は、京都北白川の日本家屋に同居して宣教を行った。50年代前半に、彼らの伝道で受洗した当時京都大学の学生だった二人が健在であることがわかり、幸運にも取材に応じてもらうことができた。高齢のお二人に聞かせていただいたお話と、提供いただいた資料から、宣教師と初期信者の交流の具体相が浮かび上がった。その内容は、フィンランド人宣教師の宣教によって始まった多くの日本の教会関係者も知らない貴重なものである。戦前・戦中における二人の生い立ち、地域社会での暮らし、大学時代における宣教師との交わり、信仰に至る経緯とその後など、戦後日本における日本とフィンランドの地域社会を舞台にした青年知識人の国際交流とその精神世界の変遷という戦後期日本の新たな歴史の一側面が明らかになったことはとても大きな成果であった。 研究計画及び研究進捗状況は、昨年7月と11月、本年3月に開催したグローバル日本史研究会において研究発表を行った。本年1月発行の『日本近現代史研究』第7号には、研究代表者の成果論文、研究分担者執筆の宣教師の上記著書の紹介文を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究推進にあたって、「FFFM」すなわち「フィンランド自由海外伝道教団」の全面的協力をいただけたことは、研究推進上の大きな力となった。「フィンランド自由海外伝道教団」の宣教の歩みとその傘下の教会史の全体像は、一つひとつの教会を訪ねて協力を依頼し、その積み重ねの結果として初めて把握できるものであるが、伝道教団組織として研究協力の窓口となる代表者を選定していただいたことで、現今のウイルス禍による実地調査の制約下にあっても大いに研究が進展した。すなわち、フィンランドミッションにより設立された京都府内・滋賀県内・福井県内にある教会関係の主な資料を、本研究課題開始初年度のうちに収集を終えることができた。 来日したフィンランド人宣教師たちが、宣教を始めて間もない1950年代の前半に受洗した当時京都大学の学生だった方に取材できたことは、幸運としか言いようのないものであった。これも、FFFMの協力があってこそ可能となった。 1950年に最初に来日したフィンランド人宣教師夫妻の孫夫婦に会えたことも、偶然と幸運が重なったものであるが、やはりFFFMの協力の結果である。孫夫妻とは昨年暮れから今年にかけて1か月に2回程度の会合を持ち、取材と研究上の意見交換を行っている。この最初の宣教師の孫夫妻とは、フィンランドミッションの日本宣教に関する研究調査の内容と実施方法についても検討を進め、充実した研究成果が得られるようこれからの研究計画を練り上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降も、前年度に続いてフィンランド人宣教師の宣教によって受洗した日本人の入信の経緯を地域社会の暮らしと合わせて具体的に明らかにしていきたい。この場合順次1950年代に続く60年代へと、時間軸を移すかたちで研究調査を進めていきたい。現在のウイルス禍の拡大状況下では、国内での実地調査もままならないが、工夫を凝らして取り組みたい。 フィンランドと台湾における資料収集と実地調査は、世界的ウイルス禍の状況下にあって今年度も延期を余儀なくされそうだが、最初に来日した宣教師夫妻の孫夫婦が本年中に4か月程度フィンランドに帰国する予定なので、Eメールで連絡を取りながら、その協力のもとにできうるかぎりフィンランドのペンテコステ派教会の日本宣教関連資料の収集を行いたい。 この孫夫婦の祖母の著書(フィンランド語)と、祖父の追加記録(フィンランド語)の読解は今年度中に完成させたい。来年度はフィンランドでの資料収集を実施し、研究期間を1年延長して再来年度に台湾での資料収集を行う(世界的ウイルス禍拡大のために、海外出張の延期をよぎなくされているため)。
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Causes of Carryover |
世界的なウイルス禍の拡大状況下にあって、国内および国外への出張が不可能となり、その費用をすべて次年度使用とせざるを得なかったためである。出張調査が可能となる状況を待って、当初の使用計画に沿って執行する。
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Research Products
(6 results)