2022 Fiscal Year Research-status Report
トルコ共和国建国期における権威主義体制の形成とその社会への浸透
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20K01001
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小笠原 弘幸 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (40542626)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トルコ共和国 / オスマン帝国 / ナショナリズム / ズィヤ・ギョカルプ / ケマル・アタテュルク |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、オスマン帝国末期からトルコ共和国初期にかけて影響力を持った、トルコ民族主義のイデオローグであるズィヤ・ギョカルプの論考『トルコ化・イスラム化・近代化』の翻訳を進めた。この論考は、トルコ建国の父ケマル・アタテュルクに影響を与え、トルコ共和国初期の国家体制をつくる一つの理論的基礎を提示したものである。今回は、論考の第五章から第七章までを翻訳して訳注を付し、九州大学人文科学研究院の歴史学部門紀要である『史淵』160巻に投稿した(「ズィヤ・ギョカルプ著『トルコ化・イスラム化・近代化』翻訳(中)」93-112頁)。また、トルコ建国の父であるケマル・アタテュルクがトルコ独立戦争を通じて権力基盤を確立し、トルコ共和国初期に権威主義的体制を作り上げるまでの状況を、アリ・フアト・ジェベソイやキャーズム・カラベキルなど、独立戦争の元勲たちの手による回想録等の史料にもとづいて検討を進めた。彼らは後年アタテュルクと決裂し、冷遇されたことから、これら回想録の利用には慎重な比較検討が必要とされるが、複数の回想録の記述を比較し、当時の新聞などの同時代史料をあわせて検討することにより、可能な限り当時の状況を復元するように努めた。史料調査としては、研究代表者が指導する大学院生を夏期に二週間、トルコ共和国イスタンブルに派遣し、イスラーム研究センター等で史資料の収集を行った。その際、アタテュルクゆかりの地に開かれた博物館も調査し、アタテュルク表象や個人崇拝にかかわる検討材料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、コロナウイルスによる渡航制限、および研究代表者の体調不良や育児等の私的な理由により、研究課題の進捗状況はやや遅れていると自己評価した。とはいえ、渡航制限も解かれ、また育児も成長に伴い負担が減りつつあることから、2023年度は十全なかたちで研究を進めることが可能であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、ズィヤ・ギョカルプ著『トルコ化・イスラム化・近代化』の翻訳を完成させる。そして、本研究課題の集大成として、ケマル・アタテュルクについての書籍刊行を目指す。
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Causes of Carryover |
2022年度は、コロナ禍によって海外史料調査が難しかったことがもっとも大きな理由である。指導院生をトルコに派遣して代理調査を行ったが、研究代表者の体調不良もあり、代表者自身による渡航は見合わせた。そのため、史料収集の効率が落ち、次年度使用額が生じてしまった。それでも、大学院生や現地の協力者、あるいはインターネットを通じた史料収集によって、史料は集まりつつある。2023年度は、そうして収集できた史料をもとに、2023年度使用額をさらなる書籍の購入費用や史料の複写費用に充て、本格的な成果を挙げる予定である。
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Research Products
(1 results)