2021 Fiscal Year Research-status Report
伝統中国の官僚体系の継承と変質ー南宋時代の人事政策と下級知識人ー
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20K01003
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小林 晃 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (80609727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 洋介 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (10293276)
丸橋 充拓 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (10325029)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 南宋王朝 / 官僚制度 / 人事政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の流行下で研究を進めることになった。相変わらず対面での史料の会読会を開くことは不可能であったため、2ヵ月に1度、Zoomにて史料の会読会を行うことで本研究を進めた。『慶元条法事類』『大唐六典』の読解は着実に進んでおり、その成果は参加者たちの今後の研究に反映されるはずである。 こうしたなか、小林晃は2021年度12月4日に龍谷大学で開催された「第二回元朝史研究会―『元朝の歴史』合評会及び科研費研究報告会―」に参加し、Zoomにて「『元朝の歴史―モンゴル帝国期の東ユーラシア―』読後」と題する研究報告を行った。この報告は2021年に勉誠出版から出版された同書について、南宋史の立場から批評・提言したもので、内陸アジア史からの視点・問題意識が濃厚に反映されている近年の元朝史研究に対して、「宋・金―元―明」という中国史の連続的な展開過程をより強く意識した研究が必要であることを具体例とともに指摘した。ここには南宋末から元朝にかけての官界における江南士人の変容を追う本研究課題に取り組むことで獲得された視座や成果が反映されている。 また徳永洋介は南宋官制の原型となった北宋元豊官制について、その意義を中国史全体への影響を視野に入れた研究を進めており、近くその成果が公開される予定である。本研究の今後の進展を後押しする重要な理論的支柱を提供するものであり、今後は南宋官制の検討を通じての具体的な検証作業がなされるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度から引き続く新型コロナウィルス感染症の流行下で研究活動を行わなければならず、しかもデジタル機器に対応できない研究者が史料の会読会に参加することができないなどの問題も生じており、現状での進展具合はやや遅れていると判断せざるをえない。また本研究では中国に渡航し、研究発表や新たに発見された石刻史料・文書史料の検討を行うことも予定していたが、上海がロックダウンされるなど、上記の計画を実行するにはとても現実的とはいえない情況であり、今後計画の変更も視野に入れるべきであろうと考えている。 ただしこうした情況にある一方で、腰を落ち着けて一つ一つの史料にじっくりと取り組むという歴史学の基本にかえって立ち返ることができているのも事実である。また本研究に密接にかかわる鄧小南氏の宋代官僚制度史に関する新著も上梓されており、史料読解やそうした関連研究の批判的な検討に大きく注力できた一年でもあった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はもともと南宋後期の官僚制度・人事制度の検討を意図したものであったが、史料読解を進めるなかで明らかになってきたのは、一つにはそうした制度の基盤となった北宋から南宋初期にかけての官僚制度(元豊官制の変質過程)の再検討の必要性であり、二つには元豊官制が回帰を目指した唐代官僚制度へ深い理解の必要性であった。2022年度は、従来通り南宋後期の官僚制度研究・人事制度研究を進めつつも、そうした新たな課題にも取り組んでいくことになりそうである。 またもう一つはデジタル機器に対応できない研究者の存在については、早急に方策を考える必要がある。新型コロナウィルス感染症の流行がある程度収まり次第、東京大学での対面での会読会の開催を行えるよう準備を進めることにしたい。 中国での研究活動については、2022年度も行うことは現実的ではないように思える。書店を通じて新刊を購入することは可能であるため、最新の研究書や史料集の購入と本研究へのフィードバックを続けつつ、日本国内に存在する漢籍の再検討も考えていくことにしたい。
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Causes of Carryover |
本研究の骨子は、日本各地の中国史研究者が定期的に東京大学に集まり、難解な史料を会読しつつその成果を世に問うというものである。ところ前年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症の流行によって東京大学に集まることが不可能となった。そのため本研究費の大宗である旅費を使用することができなくなり、これが大きな差額を生む要因となっている。また本来であれば中国に渡航して研究活動を行う予定もあったが、これについても上記の理由で渡航が非現実的となっているため、その費用も差額を生む一因となっている。ただし中国から続々と新たな史料集や研究書が刊行されているため、それを購入するための物品費が大きく膨らんでいる。これによって金額的な差額は最小限となっていると思われる。
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Research Products
(2 results)