2020 Fiscal Year Research-status Report
The intellectual activities and networks of Muslim scholars of the Southern Philippines: A study of Islamic books in Arabic and Southeast Asian languages used in the region
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20K01007
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
川島 緑 上智大学, 総合グローバル学部, 名誉教授 (50264700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 由美 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (80376821)
塩崎 裕子 (久志本裕子) 上智大学, 総合グローバル学部, 准教授 (70834349)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 東南アジア / フィリピン / イスラーム / ミンダナオ / キターブ / ムスリム / ウラマー / 知識人 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2020年度は、新型コロナ感染蔓延のため、研究打ち合わせや研究会はオンラインで実施した。研究打ち合わせでは研究課題と各自の役割分担を確認するとともに、2020-21年度の重点課題として、東南アジアのイスラーム神秘主義思想における主要な観念、「存在の7段階」に注目し、これに関するキターブ(イスラーム書)を研究することとした。これと並行し、科研17K03144(2019年度終了、代表者:川島緑)において着手した東南アジア・ムスリムの他界観・来世観に関するキターブの研究を継続し、さらに深めることにした。 この方針に基づき、「存在の7段階」に関する主要なキターブとして、南タイ出身のイスラーム学者ダーウード・ファターニーによるマレー語著作『マンハル・アル=サーフィー』を講読テキストとして選定し、勉強会開催に向けて各自で講読・翻字を行った(勉強会は当初3月中を予定していたが参加者の都合により4月3日に延期して開催)。また、東南アジアのムスリムの他界観・来世観に関するキターブの分析に基づく英文論文集『東南アジアのキターブ比較研究(6):天国と地獄』(菅原由美編、川島緑、久志本裕子他著)を執筆・編集し、上智大学イスラーム研究センターよりワーキングペーパーとして刊行した。 3月15日には上智大学アジア文化研究所「アジア研究セミナー」として「東南アジア・キターブ比較研究会」を開催し、フィリピンのキターブに関する研究状況と今後の展望に関する報告を行い、情報共有、および、研究上の問題点に関する意見交換を行った。この研究会では、18世紀スールー王国と中国の間で交わされた漢文外交文書に関する研究報告、および、南タイ西海岸におけるイスラーム基礎教育に関する研究報告も行い、これらの地域におけるムスリムの知的活動や言語使用等について議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度初めには、新型コロナ感染拡大の影響により研究活動の開始に遅れが生じたが、その後は研究代表者と分担者がオンラインで密接に連絡を取り合って具体的な研究活動を計画し、研究会、テキスト講読、勉強会を精力的に実施したため、当初の遅れを取り戻し、ほぼ順調に実施することができた。これと並行して論文執筆と編集に取り組み、年度内に英文論文集(菅原由美編著、川島緑、久志本裕子他著)を刊行することができた。 また、本年度に計画していたフィリピンでの海外調査は、新型コロナ感染による海外渡航制限のため、実施できなかったが、これは現地での新型コロナ感染収束を待って、次年度以降に実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も研究参加者間で緊密に連絡を取りつつ、共通テキストの講読を中心とする勉強会を継続するとともに、各自の研究課題に精力的に取り組み、中間報告を含め、それらの成果を年2回程度、研究会、シンポジウムなどで報告し、外部の研究者を含めて活発に議論を行い、研究を進めていく。オンラインの研究打ち合わせや研究会は、国内遠方や海外在住の研究者も参加しやすいという利点があるので、新型コロナ感染収束後も積極的に活用する。 2021年度は、必要に応じて他の研究者の協力を得つつ、テキスト講読や勉強会、研究会を通じて東南アジアの「存在の7段階」の研究を推進する。さらに、本研究、および、科研17K03144(2019年度終了)の成果にもとづき、(1)タイにおけるイスラーム知識の伝達とキターブに関する英文論文集Comparative Study of Southeast Asian Kitabs (7)(上智大学イスラーム研究センターWorking Paper Series )(川島編)、および、(2)マレーシア、サバ州におけるイスラーム知識の伝達とキターブに関する英文調査報告書、Kitabs and the transmission of knowledge in the Marampayan area in the Kota Belud District of Sabah, Malaysia(上智大学アジア文化研究所Occasional Paper)(川島・久志本共著)の2点の出版物刊行を計画している。 また、2021年度後半にはフィリピンでの現地調査を実施し(川島、菅原、久志本)、現地研究者との意見交換、現地のイスラーム学校や個人所蔵のキターブ閲覧・調査、関係者への聞き取り調査、資料収集等を行う予定である。ただし、現地の新型コロナ感染状況によっては現地調査をさらに延期する可能性もある。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染蔓延のため、当該年度に予定していたフィリピンでの現地調査を次年度に延期した。これに伴い、本年度の外国旅費全額、および、補助者謝金の一部(海外調査時の補助者謝金)を次年度に繰り越して使用することにした。また、東京で対面により実施予定であった研究会、勉強会をオンラインで実施したため、国内旅費全額を支出しなかった。これは次年度に繰り越し、対面での研究会や研究打ち合わせに使用予定である。
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