2020 Fiscal Year Research-status Report
Reconsideration of the control of different races through conciliation in the Tang dynasty by carved historical materials
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20K01010
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森部 豊 関西大学, 文学部, 教授 (00411489)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 羈縻支配 / 羈縻州 / 契丹 / 靺鞨 / 折衝府 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東ユーラシアに君臨した唐王朝(618-907)が周辺民族のを統治するために行った羈縻支配について、正史などの編纂史料のみならず、石刻史料の分析を通じて、その多様な姿を浮かび上がらせ、新しい唐朝の羈縻支配像を描きだそうとするものである。 本研究期間全体を通じての目的は、公刊石刻史料集で確認できる羈縻州関係墓誌のデータを集めなおし、その内容を分析するものである。墓誌からは、羈縻府・州・県の官職に就いた官人・武人の情報を得ることができるが、この方面で研究が進んでいる中国における成果では、墓誌の一部分のみを取り出して研究を進めており、また当該墓主の出自を分析せず、多くは漢人として扱っている傾向がある。そこで、すべての関連墓誌を分析しなおし、唐朝が羈縻支配にどのようにかかわっていたのか、それは時代と地域によって、どのような差異があるのかを解明していくことが最終目的となるが、1年目は遼寧省朝陽市で発見された墓誌について分析・検討を加えた。 本来は、遼寧省と内モンゴルで関連石刻史料の調査を行う予定であった。朝陽には未公表の墓誌が多く存在し、その中に契丹族の他、奚族や靺鞨族の墓誌を確認できる。しかし、新型コロナの感染流行のため、実地調査が不可能となり、日本で入手できる情報にもとづき、唐前半期の営州都督府に隷属した「羈縻府州」を対象とし、営州羈縻府州に折衝府が存在したことを、以前の科研の成果をもとに改めて論じ、また営州羈縻府州の府州縣官の出自について考察を加え、さらに彼らの就任の様相について、具体的事例をあげて問題を提起した。そして、総合的にみて唐朝の羈縻政策はどのようなものだったのだろうか、という問題に対し、営州という唐朝東北辺の一事例ではあるが、展望を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に予定していた当初の計画のうち、最も大きな目的は、中国遼寧省朝陽市における石刻史料調査と内モンゴル自治区における奚の羈縻都督府の遺跡およびその関連情報を現地の文物考古研究所のスタッフを通じ、入手することであった。 しかし、この計画は新型コロナウイルスの影響により、渡航が実現せず、実施できなかった。そのため、中国側で考古系学術雑誌に発表された石刻史料の分析にとどまったことが、研究の遅れの最も大きな理由である。 ただ、「やや遅れた」でとどまった理由は、おそらく中国側も、このコロナ禍の状況の中、新たな考古学的発掘作業に影響が生じ、その代わり過去の発掘の報告書を発表しているようであり、そのため、初年度中に遼寧省朝陽市で発見された羈縻州関係の石刻史料が二点公表され、それが本研究をすすめるうえで、役に立ったことを指摘できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、4年間の研究期間を予定している。最終年度に研究集会を予定していることは問題ない。それまでの残り3年間は、編纂史料の整理の他、四川・雲南・広西に存在する石刻史料の分析を通じ、この方面の羈縻支配の実態をうかびあがらせ、北方の羈縻支配との差異を明かにするものである。そのため、20世紀後半に出土した「爨守忠墓誌」「助教鮮君墓誌」(四川省成都市)、伝存石刻史料の「南詔徳化碑」「王仁求碑」「段部会盟碑」(雲南省大理市)、「智城碑」「堅固大宅頌」(広西壯族自治区上林県)を調査する予定である。 ただ、現状では2年目の海外調査も難しいだろう。そこで、2年目は、編纂史料の整理と関連データの収集を中心に行う事に重点をおくこととする。 また、四川・雲南・広西などにある石刻史料について、日本で得られるそれらの情報をもとに釈文を作成し、将来の現地調査に備えることとする。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍のため、海外渡航ができず、中国における現地調査ができなかったためである。 2021年度は、国内における史料整理などを中心とした研究活動を行う予定であるが、21年度後半期には中国における調査が再開できることも視野にいれておく。 また、2021年度には中国から大型の石刻史料集が出版されるとの情報が入っている。この史料集の購入の計画している。
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Research Products
(1 results)