2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K01017
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小林 聡 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40234819)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸川 貴行 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (60552255)
石原 聖子 (大知聖子) 名城大学, 理工学部, 助教 (80650647)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 南北朝後期 / 隋唐帝国 / 南朝貴族 / 墓誌 / 唐王朝の南朝化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは「6~8世紀華北における南朝系人士の活動と文化融合」であり、6~8世紀(中国の王朝区分で言えば、南北朝後期・隋・初唐・盛唐)の中国諸王朝が民族的にも(中国内の)地域的にも多様な社会や文化を包含しつつ、文化的融合を進めていった有様を、特に南朝的要素・南朝系の人士に注目し、彼らの活動を明らかにしようとするものである。こういった作業によって、隋唐帝国の多様性の一環を明らかにしうると考えたのである。本研究においては、正史をはじめとした伝世文献資料の他に、大量の墓誌を使用して南朝人士とその家系の足跡を追おうとする点が特徴であり、研究代表者の小林聡、および研究分担者の戸川貴行は従来の南朝研究、研究分担者の石原(大知)聖子は北朝研究の研究蓄積を生かして研究を進める予定であった。 しかしながら、2020年度は、コロナウイルス蔓延のために、国内や中国での調査を進められる状況ではなかったので、やむを得ず出張は断念し、研究代表者・研究分担者ともに本研究に関連する史資料の整理など、基礎的な作業に従事した。中国で続々と発見される北朝隋唐の墓誌については、最新の出土情報を得ることにつとめたが、特に大知の北魏史・北朝史関する専門的な知識、特に各人士の経歴に焦点を当てた研究や、墓誌の叙述形式にまで目を配った研究に助けられている。また戸川は礼制・音楽史に、小林は礼制・服飾史に各々焦点を当てた研究を進めているが、いずれも南朝から隋唐への流れを意識したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、2020年度いっぱい、全国的なコロナウイルス蔓延のために国内出張はままならなかったので、研究の打ち合わせも直接行うことができず、また中国へ渡航して、遺跡調査や文物の実見などを行うことが困難な状況であったため、実地調査の機会も失われてしまった。 如上の理由によって、2020年度の研究は、手元にある史資料を活用したものにならざるを得なかった。研究代表者は諸般の事情によって目立った業績はあげられなかったが、研究分担者については、各々の専門的な知識を生かして、いくつかの業績をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
国内外の出張は、いつ可能になるのかが不明なので、確たる予定を立てることが困難である。しかしながら、中国で出版された史籍や研究文献は購入することが可能であり、また、研究対象の中核となる北朝隋唐の墓誌(拓本)についても中国で出版された図録を購入すること可能であるので、本研究の本来の目的である、墓誌を活用した北朝隋唐における南朝系人士の活動の解明を進めるのに、こういったハンディキャップはそう大きな障害にはならないと考えている。2021年度以降は、出張が困難な場合も見据えて、南朝人士に関する必要なデータを収集・整理していきたい。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、2020年度、研究代表者・研究分担者あわせて380,000円の旅費を計上していたが、当該年度はコロナウイルスの蔓延のために移動が困難になり、日本国内の出張や中国への調査出張ができない状況となった。そのため、当初計上していた旅費を物品費(特に図書購入)や謝金などにあてることも考えたが、当該年度はめぼしい図録や研究書が刊行されなかったこともあって、それらの費目に振りかえることもできなかった。そのため、使用できなかった額を次年度以降に繰り越し、これを旅費として有効に使用した方がよいと判断した。2021年度は事情が許す限り、国内旅費や、できれば中国など海外への調査のための旅費として使用していく予定である。国内出張は京都大学や九州大学などでの文献調査や、研究代表者と研究分担者の打ち合わせのために旅費を使用する予定であり、海外出張としては、西安や洛陽などでの遺跡・文物の調査に旅費を使用する予定である。なお、2021年度も出張(特に海外出張)が困難な場合は、2022年度以降に出張を行う予定である。
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