2020 Fiscal Year Research-status Report
清代後期盛京社会における科挙受験と婚姻:マンチュリア地域変動のなかの新たな選択
Project/Area Number |
20K01020
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古市 大輔 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (40293328)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 清代 / 盛京 / 科挙 / 婚姻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マンチュリア南部の盛京(奉天、現・遼寧省)社会の人々が清代後期に試みた科挙受験と婚姻のありように注目し、そこにみられる人々の動機や選択・戦略を明らかにすることを通じて、清代後期のマンチュリアにおける地域変動の特徴の一端を解明することを試みるものである。具体的には、清代後期の盛京社会を構成する人々・家族の歴史を記す記事を諸史料から抽出し、特に科挙受験と婚姻の事例に現れるそれぞれの家族集団の戦略・動機やその特徴などを指摘することを目的としている。 本研究課題の初年度にあたる今年度は,盛京旗人家族との間に姻戚関係などの人的関係を構築していった漢人家族のうちのいくつかに関する記事を諸史料から抽出し、それら家族の歴史を復元するための基盤の構築に努めた。 新型コロナウイルス蔓延の影響で、国内外の諸機関に所蔵されている未刊行の諸史料の調査・収集は叶わなかったものの、すでに入手していた、あるいは新たに購入した刊行史料を駆使して、可能な限りの基礎的な情報を獲得することはできた。ただ、未刊行史料の内容を確認し得ていない現時点では、その成果を公表する段階には至っていない。次年度以降の研究進行を俟って公表することを試みたい。 なお、今年度には、本研究課題に直接は関わらないものの、近代以降のマンチュリア(満洲)の歴史に関する研究発表・招待講演の機会をいくつか得た。これらの機会を通じ、本研究課題で明らかにする予定の清代後期のマンチュリア史との接点を検討するための契機を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでに入手していた、あるいは新たに購入した刊行史料を駆使して、可能な限りの基礎的な情報を獲得し、その部分的な分析は進められたものの、新型コロナウイルス蔓延の影響で、国内外の諸機関に所蔵されている未刊行の史料の調査は殆ど進めることができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
清代後期の盛京社会を構成する人々・家族が持つ科挙受験や姻戚関係の戦略・動機に関する検討を始めるための基盤作りのため、未だ獲得できていない盛京出身の旗人官僚・漢人官僚とその家族について記された記事、特に科挙受験や婚姻に関わる記事を、まず早急に諸史料から抽出していくことが必要になる。そのため、新型コロナウイルス蔓延の状況次第ではあるものの、状況が好転次第、本務校に所蔵されている史料以外の国内外の諸機関に所蔵される史料の調査を速やかに進めたい。 ただ、海外渡航に懸念が残るなど、状況が好転しない場合には、当初、令和4年度に予定していた部分の史料調査も含め、国内の各機関に所蔵されている史料の調査をまず優先して実施するか、あるいは、すでに入手済みの史料のほか、未購入の刊行史料を積極的に購入して、それら史料の記事内容の調査・分析を優先して進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延の影響で、旅費を用いた国内外の各機関における史料調査が実施できなかったため。基本的には、次年度に予定している史料調査と機会を合わせて追加調査のかたちで旅費として使用する予定であるが、新型コロナウイルス蔓延の状況が好転せず、各機関を訪問しての史料調査が叶わない場合には、各機関から直接史料複写を依頼するその費用として、あるいは未購入の刊行史料を予定よりも前倒しして購入するその費用として、この部分の助成金を使用することにする。
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Remarks |
招待講演として、2020年9月19日に富山県南砺市で開催された《2020年度松村謙三フォーラム秋季プレ研修会》において「満洲国前史としてみる清末満洲の政治と社会」(講演者:古市大輔)と題した講演をおこなった。
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