2021 Fiscal Year Research-status Report
Impact of the Salafi Jihad Concept on Formation of a Modern Islamic State
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20K01022
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 覚 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (60359867)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | サウディアラビア / 全方位均衡 / 国家形成 / リアリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、サウディアラビア王国の建国期の全方位均衡行動に関して検討する作業が進展した。英国外交資料を活用した先行研究、Troeller, Gary (1976) The Birth of Saudi Arabia Britain and the Rise of the House of Sa'ud. London: Routledge、Goldberg, Jacob (1986) The Foreign Policy of Saudi Arabia: The Formative Years, 1902-1918. Cambridge, Mass.: Harvard University Pressなどを検討して、国家形成期におけるサウード家のリアリズム行動を精査したところ、建国後の全方位均衡の原型であると確認することができた。この研究成果は、共著出版の一章として原稿をある出版社に送ったが、出版編集の都合のために、まだ年度内に公開はされなかった。 現時点では未出版となってしまったために研究実績の概要としては説明しにくい箇所が多くて申し訳ないのだが、本年度の検討では、サウディアラビアの国家形成過程に関して全方位均衡論を適用していると言える研究は、当初、予想していた以外にも見受けられると確認された点も、研究作業上の成果となった。そこでこれからの研究課題期間に、サウディアラビアの国家形成について、国内のワッハーブ主義的正当性と外交における勢力均衡の組み合わせとして論ずるための追加の材料を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果は、共著出版の一章として原稿をある出版社に送ったが、まだ出版編集の都合のために、年度内に公開はされなかった。このために、今年度の公開成果をあげることはできなかったが、次年度には間違いなく出版されると考えている。また、三年度目にサウディアラビアの国家形成とジハードに関する研究成果を引き続き公表するために、二年度目の考察では十分な確信を得る準備段階に達したと考えている。そこで、複数年度の研究プロジェクトとしては、順調に進展している範囲であると考えている。 具体的には、英国外交資料やサウディアラビアのワッハーブ主義の教義資料(アラビア語)を活用したとして知られる Christine Moss Helms. The cohesion of Saudi Arabia : evolution of political identity. Johns Hopkins University Press, 1981の研究における資料解読での誤謬に関して、本研究は3年度目以降で、明確に指摘した上で代替の分析を提示できる準備が整った。本年度は、次年度のための準備作業のような年度になってしまったが、この蓄積を新年度では活かして成果を公表したい。
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Strategy for Future Research Activity |
第二次サウード朝と建国期におけるジハードの教義と国家形成に関しては、当初2年度目に予定していたが、すでに初年度目に一定度、考察を始めて成果の一部を公表していた。この研究課題の部分に関しては、3年度目に分析をさらに深めて成果を全て公表することができる。本年度に、先行研究におけるウラマーのファトワー集や年代記の活用上の誤読を理解できたので、3年度目には、それを訂正する研究成果を公表するのが目標となる。 また、申請時点では、第一次サウード朝から建国期までの国家形成に関して、初年度から3年度までに達成すると予定していたので、第三年度には予定通り、成果の発表を進めていく予定である。 新型コロナウィルス感染予防措置のために研究調査のための海外渡航は見込みが立たないので、状況を見極めつつ、実施の機会を探ることとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため、国外出張を実施できず、また、国外での資料購入も実施できなかった。本年度もまた、新型コロナウィルス感染拡大のた め、国外出張の見通しがはっきりしない状況である。新型コロナウィルス感染拡大の防止への協力が最優先課題となるため、その推移を見極めて海外出張の実施 の機会を窺うこととしたい。予定の変更を織り込みながら、当初予定の3年目以降に予定していた研究計画の中で可能なものを進捗させる。
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