2020 Fiscal Year Research-status Report
戦後国共内戦期後半における土地改革運動の急進化と共産党の支配構造
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20K01023
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
三品 英憲 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60511300)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中国共産党 / 土地改革 / 華北 / 劉少奇 / 毛沢東 / 中国土地法大綱 / 階級区分 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、三品英憲単著論文「戦後内戦期の土地改革と農村社会認識-「土地の平均分配」と「中農財産の保護」の間-」(笹川裕史編著『現地資料が語る基層社会像-20世紀中葉 東アジアの戦争と戦後-』、汲古書院、2020年12月15日、所収。第8章。207~239頁)を発表した。この論文では、1946年末から1947年9月までの中国共産党の土地改革政策の展開と、土地改革の前提であった農村住民に対する階級区分の基準の変化について詳細に検討した。その結論は以下のとおりである。 中国共産党の土地改革政策は、「地主-小作関係」が社会の基盤となっているという公式の社会認識に基づいて立案され、中央レベルの指導者・組織から地方の党組織に対して命令されていたが、当該時期の主たる支配地域であった華北農村は自作農が中心であり、この公式の社会認識からは大きくズレがあった。それゆえに階級闘争としての土地改革は所期の盛り上がりを見せていなかったが、これに危機感を抱いていた劉少奇は国民党軍に追われて河北省に入った後、現地の地方党組織との協議の中で階級区分の基準を巧妙にずらし、単なる富裕者(他人の労働を搾取しているか否かに拘わらない)を「富農」に区分することを認めた。これによって土地改革運動は盛り上がりを見せるようになったが、同時に階級区分の曖昧さを招いたために農村での運動は過激化し、社会秩序は大きく混乱することになった。1947年10月に決定された中国土地法大綱は、こうした混乱に対して秩序の基準を明確化するものとして作用した。以上である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、戦後国共内戦期(特に後半の時期)における土地改革運動の急進化と共産党の支配構造を明らかにすることを目的としているが、2020年度の成果は、1947年10月に決定された中国土地法大綱に至る過程とその間の社会秩序の混乱を明らかにしたものであり、研究の最終的な目的に向けて着実に知見を積み重ねることができている。とはいえ、当該時期は資料面で大きな制約があるため(おそらく中国共産党が秘匿している)、限られた資料を微に入り細を穿って極めて慎重に分析する必要があり、なおもその全容を明らかにしたとは言えない。以上から、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、1947年10月の中国土地法大綱の決定までの社会秩序の混乱状況と、決定以後の社会秩序の混乱状況との間には質的な差異があることが明らかとなった。今後の研究は、この秩序の混乱の質的な差異の内実を明確にするとともに、そうした秩序の動揺が共産党の支配にどのような影響を与えたのか、そしてそのことが中華人民共和国をどのような構造をもつ国家として成立させることになったのかを検討していく。 またその際には、土地改革(とその下で生じた社会秩序の混乱状況)が、中国共産党の軍事力にどのような影響を及ぼしていたのか(いなかったのか)、国民党軍との具体的な戦闘にどのような変化をもたらしていたのか(いなかったのか)、といった軍事的な側面にも注目する。
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Research Products
(1 results)