2021 Fiscal Year Research-status Report
戦後国共内戦期後半における土地改革運動の急進化と共産党の支配構造
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20K01023
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
三品 英憲 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60511300)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 毛沢東 / 中国社会 / 中国農村 / 土地改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、本研究課題と内容的に密接な関係がある最新の研究書である鄭浩瀾・中兼和津次編著『毛沢東時代の政治運動と民衆の日常』」(慶應義塾大学出版会2021年)に対する書評を執筆し発表した。この書評では、本書の概容を簡潔に紹介するとともに、本書に収録されている諸論考が、共産党の支配が確立していく中で「民衆の日常」がどのように変化し、そのことが新しい社会秩序の成立にどのような影響を与えたのかを明らかにしている点、またそのことを、現在公開が進んでいる新出資料に基づいて明らかにした点などについて、「毛沢東時代」に関する世界的な研究の進展に寄与するものであることを評価した。そのうえで、本書が1949年10月の中華人民共和国の成立前後における「連続」面を強調していることに対し、個々人の間の関係の取り結び方における連続性と、権力の浸透による社会の断絶とは分けて考えるべきであると批判した。 このほか、本研究課題に関する著書を刊行するための執筆に注力していた。この執筆作業では、①1930年代~40年代にかけての毛沢東の農村社会認識と華北農村の社会・経済構造の実際とのズレ、②1947年3月から1948年5月までの共産党土地改革政策の変遷と、それが支配下の社会に与えた影響、③戦後内戦期土地改革と中華人民共和国建国初期(1950年代前半)の政権構想との関係、などについて成稿した。これらの書き下ろした文章と、2020年度までに発表した論文とをあわせ、2022年度中の研究書の刊行を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に関する研究書の刊行に向け、2020年度までに発表した諸論考で扱っていなかった部分について研究を進め、文章化することができた。2021年度中に発表できた論文等は少なかったが、上記の作業を進める過程で、1930年代から1950年代前半までのおよそ四半世紀にわたる中国共産党の歴史(特に社会に対する支配の確立過程とそのメカニズム)について、一貫した論理の下で捉える視座を獲得できた。以上から、「おおむね順調に進展している。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1930年代から1950年代前半までの中国共産党の歴史(特に社会に対する支配の確立過程とそのメカニズム)について、一貫した論理の下で捉える研究書の刊行に向けて、残されている作業を行う。具体的には、①本研究が獲得した視座から、改めて国内外の関係する先行研究の到達点と問題点を整理すること、②本研究が主たる分析対象としている華北地域の歴史的展開を中国全体の状況の中に位置づけるため、東北地域・長江北岸地域の状況を確認すること、この2点である。
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Causes of Carryover |
2021年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、当初予定していた海外での資料調査が行えず、また国内の学会もオンライン開催が増えたため、旅費として支出することを予定していた部分が執行できなかった。2022年度に状況が改善すれば海外での資料調査を再開する予定であるが、もし2021年度と同様の状況が続く場合には、本研究課題に関する著書の刊行に関わる諸費用に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)