2020 Fiscal Year Research-status Report
中国古代官制秩序の形成-前漢劉邦集団の構造との関連から-
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20K01024
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
福永 善隆 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (00581539)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 前漢 / 劉邦集団 / 察挙 / 官制 / 服色改正 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は前漢の官制秩序の形成について、初代皇帝高祖劉邦と彼に従い、漢王朝を打ち立てた創業の功臣たちによって構成される劉邦集団に着目し、その内部構造とどのように関連するのか、解明しようとするものである。 このような視点と関連して察挙に着目し、察挙が形成された第5代皇帝文帝期の劉邦集団の勢力を中心として分析を進めた。まず、2020年7月18日(土)にオンラインで行われた、第3回漢唐史研究会において、「前漢官制秩序の形成と劉邦集団」と題する報告を行い、察挙の形成に劉邦集団が深く関わったこと、それ故、その構造に劉邦集団の構造が大きく反映されていることを論じた。また、同年11月7日(土)にオンラインで行われた、第75回東洋史学研究会において、「文帝期における劉邦集団の実態:服色改正との関係を中心として」と題する報告を行い、当該期に行われた黒から黄への服色改正の議論を通して、文帝期に劉邦集団が置かれた状況について解明した。そこでは、劉邦集団にとって服色改正が高祖劉邦のカリスマ性と関わる問題と認識されていたこと、さらに、劉邦集団のみならず、さまざまな背景をもつ官僚を結集するために高祖劉邦のカリスマ性が利用されていたことを明らかとした。 さらに、『鹿児島大学法文学部紀要人文学科論集』第88号にて、「前漢文帝期における察挙の形成と劉邦集団」と題する論文を公刊した。これまで中央集権体制確立の過程として、皇帝側の意図からしか考察されていなかった文帝期の察挙について、その議論・実施に劉邦集団が影響を与えたこと、劉邦集団にとっては自身の勢力を維持するために、関係のある人材を登用し、彼らのネットワークに取り込むことを目的としたことを論じた。 これら文帝期の状況が解明されたことにより、以降、それがどのように作用して官僚機構、の構造に影響を与えたのか、さらに研究を展開する土台を固めることができたと思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコロナウィルスの影響により、学会参加・資料調査などは実施できなかった。 その分、本年度は関連研究の把握・関連資料の分析に時間を割いた。また、多くの研究会がオンラインで行われたため、積極的に参加することができた。このような状況のなかで、口頭報告2本を行い、また論文1本をまとめることができた。本年度の成果により、察挙の形成に劉邦集団が大きく関わっていたこと、また彼らの置かれた状況が明らかとなり、察挙に劉邦集団の構造が影響を与えていたとする本課題の出発点となる仮定の土台が固められ、今後研究を進めていくうえでの基礎が整備されたと考える。よって、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前漢文帝期における服色改正の議論を通して、劉邦集団の勢力の推移を解明した、昨年度の報告について、会上の議論を含めて論文化する。本年度の成果によって、察挙の形成と劉邦集団の関係が明らかとなったため、察挙の構造と劉邦集団の構造との関連を明らかにし、さらに、武帝期以降の官僚機構の構造についても分析を進めたい。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナウィルス感染の拡大により、研究会がオンラインで行われたため、旅費として支出することができなかった。次年度はコロナウィルスの感染状況を見て、研究会などに出席し、場合によっては、必要な出土史料の図録・書籍などの購入のための物品費として使用したい。
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