2021 Fiscal Year Research-status Report
中国古代官制秩序の形成-前漢劉邦集団の構造との関連から-
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20K01024
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
福永 善隆 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (00581539)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 前漢 / 劉邦集団 / 察挙 / 官僚制 / 監察制度 / 人格的結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は文帝期の察挙が劉邦集団にとっては彼らと個人的関係を有する人材を登用し、そのネットワークに取り込むことを目的とするものであり、その導入時における劉邦集団の影響の強さを論じたが、本年度はその補強として察挙導入時の劉邦集団の勢力について明らかにし、前漢前半期の官僚たちの人格的結合にも論及した。さらに、前漢後半期の官制秩序を追究する基礎として、当該期の官僚機構の構造変化についても研究を進めた。 これまで劉邦集団の勢力の変遷については文帝の治世前半に行われた就国令の公布までに止まっていたのに対し、「前漢文帝期における劉邦集団の勢力-服色改正の議論を中心として-」(『日本秦漢史研究』第22号)を上梓し、服色改正に関する議論の経緯を通して、文帝期には劉邦集団が政策に対して一定の影響力を未だ保持していたこと、よって、文帝と劉邦集団の意図の妥協点としてその政策を考えなければならないこと、その一つとして察挙も捉えるべきと指摘した。また、そのなかで高祖劉邦のカリスマ性とその権威が依然として劉邦集団のみならず、さまざまな背景を持つ官僚群の結節点となっていたことを明らかにした。また、岡田和一郎・永田拓治編『漢とは何か』(東方書店)に「集団から帝国へ-前漢」と題する論考をを寄稿し、これまでの研究成果をもとに現在報告者が持っている見通しについて概要を述べた。 さらに、8月28日にオンラインにて開催された第8回アジア史連絡会にて、「前漢における御史制度の展開補論」と題する報告を行い、前漢後半期の官僚機構の展開について、以前行っていた監察制度を視角として再検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
察挙について、劉邦集団の成員にとっては劉邦集団の人的ネットワークに新しい人材を加えていく装置として機能したとする報告者の視点の拝啓については本年度の研究成果によってほぼ固まった。今後の展望についても明らかにしたのは重要な成果である。また、本研究のまとめとして前漢後半期の官僚機構の構造を追究するための糸口として、報告者が以前行っていた監察制度・側近官の問題との関連も見えてきた。よって、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は前漢一代を通じた官僚機構の展開について、その大枠を明らかにすることを中心としながら、簡牘の関連史料等も調査していく。コロナの感染拡大の影響で研究会等の出張はほとんどできていないが、状況を見て可能であれば段階的に実施していきたい。
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Causes of Carryover |
昨年度から引き続き、コロナの感染拡大により調査用の旅費を執行することができなかった。今後、コロナの状況を見て、調査を行っていきたい。
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