2021 Fiscal Year Research-status Report
「民衆」のロスアンジェルスー共振する都市の〈関係史〉
Project/Area Number |
20K01034
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土屋 和代 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60555621)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人種・エスニシティ / ロスアンジェルス / アメリカ合衆国 / 都市 / ジェンダー / インターセクショナリティ / 社会史 / 歴史学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、①アメリカ西部におけるもっとも古い黒人新聞のひとつ『カリフォルニア・イーグル』の編集者兼発行人を40年にわたり務めたシャーロッタ・バスについて小論を記した。バスがどのように人種隔離、警察暴力、排外主義、性規範、軍国主義を問い、二〇世紀前半のロスアンジェルスにおける黒人自由闘争を牽引したのかを考察した(「『誰のための民主主義か』―ロスアンジェルスにおける長い黒人自由闘争とシャーロッタ・バス」岩本裕子、西﨑緑編『自由と解放を求める人びと―アメリカ黒人の闘争と多面的な連携の歴史』所収)。 ②組合活動家でアメリカ共産党員だったエミール・フリードが設立し、労働運動、黒人解放運動、移民の権利擁護、女性解放運動等に関連する文書史料、書籍、雑誌、パンフレット、視聴覚資料を保管する社会研究調査のための南カリフォルニア図書館についてコラムを執筆した(同書に所収)。 ③1965年のワッツ蜂起後に設立された、ワッツ・ライターズ・ワークショップという詩、短編小説を創作するワッツに暮らす人びとを束ねた組織と、そこから分離独立し結成された団体「ワッツの詩人」を取り上げ、ブラック・ライヴズ・マター運動が俎上に挙げる警察暴力と貧困という暴力を問う思想がいかに今日に至るまで育まれてきたのかを分析した(「『表現という剣』―ワッツ・ライターズ・ワークショップとロスアンジェルスにおける制度的人種差別との闘い」『大原社会問題研究所雑誌』)。 ④ブラック・フェミニズムの思想的展開とインターセクショナリティという概念の形成を、具体的な活動家、知識人の軌跡をたどることで検討した(同志社大学アメリカ研究所秋季公開講演会で報告、「ブラック・フェミニズムとインターセクショナリティー―人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティ」『「いま」を考えるアメリカ史』に所収予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米国で研究調査、史料収集を実施することが出来なかったものの、史料や文献を取り寄せるなどして、今のところおおむね順調に進んでいる。「研究実績の概要」に記した論文・コラム・報告に加えて、 ⑤貧窮状態にあるシングルの親とその子どもたちへの公的扶助プログラムである要扶養児童家族扶助(AFDC)の受給者を組織した全米福祉権団体がなぜ解体に至ったのかを、AFDCを取り巻く政治的、社会的情勢の変化のなかで読み解き、小論にまとめた(「全米福祉権団体の解体ー体系的人種主義、ジェンダー、反福祉のイデオロギー」『アメリカ研究』)。 ⑥バスが1952年に進歩党の副大統領候補に指名され、大統領選挙に臨んだときの言葉(「勝とうが負けようが、問題を提起することで私たちは勝つ」)、およびアメリカ研究、人種・エスニシティ、フェミニズムやマルクス主義研究を牽引してきたアンジェラ・Y・デイヴィスが、カリフォルニア大学を解雇されたことへの異議申し立ての言葉(「教育は、人々の精神を解放させるべきものだ」)を同時代のコンテクストのなかで分析した小論を記した(共著『私たちが声を上げるとき』に所収予定)。 ⑦奴隷制度確立以前から現代に至るまでの黒人女性の歴史を綴った『アメリカ黒人女性史』(仮)を共同翻訳した(2022年度に刊行予定)。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も新型コロナウィルスの感染拡大により米国で研究調査、史料収集を実施することが出来なかった。これまでに収集した史料を活用しつつ、必要な史料、文献を取り寄せ、研究を進める予定である。新型コロナウィルスの感染状況が改善した際にはロスアンジェルスで研究調査を実施したい。 メキシコ系アーティスト、教育者、活動家のジュディス・バカが世界最長の壁画「グレート・ウォール・オブ・ロスアンジェルス」を通してどのようにロスアンジェルス、カリフォルニア、アメリカ社会像を描いたのか、「民衆」のためのアートを生み出したのかを引き続き検討する。また、ロスアンジェルス研究、都市研究、インターセクショナリティに関する文献、論文を読み進める。
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Causes of Carryover |
2021年度も新型コロナウィルスの感染拡大により米国で研究調査、史料収集を実施することが出来なかった。新型コロナウィルスの感染状況が改善した際にはロスアンジェルスで研究調査を実施したい。2022年度はバイアウト制度を利用し、本研究課題により一層集中できるよう努める。
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Research Products
(6 results)