2020 Fiscal Year Research-status Report
13世紀後半北イタリア都市間関係史の動的構築-河川交通・紛争・秩序
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20K01039
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高田 京比子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (40283668)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ポー川 / 河川交通 / ヴェネツィア |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ヴェネツィアとクレモナの1258年の協約について以前に書いた草稿の修正を行った。この協約の特徴は、ヴェネツィアとクレモナの協約でありながら、フェッラーラ領域での水路(つまりポー川)の自由通行が保証されている点である。クレモナとフェッラーラが当時、エッツェリーノ・ダ・ロマーノと教皇を軸に敵対関係にあったことが、両都市が直接和平交渉ができない理由であったことはすでに述べていたが、ヴェネツィア側がなぜクレモナに対してフェッラーラ領域での安全を保証することができたのかをさらに調査した。ヴェネツィアが当時、軍事的にポー川へ浸透しようとしていたこと、すでに1230年からフェッラーラに対して優位な協約を結んでいたこと、1270年代にはポー川を巡視する警察船を巡回させていたことは様々な文献で述べられている。しかし、ヴェネツィアとクレモナの協約が結ばれた1250年代においてヴェネツィアがポー川の警備をしていた証拠はない。またヴェネツィアは1240年のフェッラーラにおける政権交代に重要な役割を果たしていたが、政治的にフェッラーラに対してどの程度の影響力を有していたのかも当時の史料からは定かではない。そこで1258年1月にヴェネツィアとフェッラーラが結んだ協約を精査し、これと1258年9月のヴェネツィアとクレモナの協約の内容を比較することで、このヴェネツィアとフェッラーラの協約が、クレモナに対してヴェネツィアがフェッラーラ領域での安全を保障する上での重要な布石となったであろうことを推論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
論文の草稿の修正に時間がかかったために、新しい研究を進めることができなかった。また本年度は、以前取得した科学研究費による成果をまとめた論文集『<母>を問うー母の比較文化史』を編著者として出版したために、そちらの仕事に時間が取られて河川交通については、あまり研究が進められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1258年のヴェネツィアとクレモナの協約を中心に考察を進めていく中で、、1177年のポー川の自由通行を定めたフェッラーラと諸都市間の協約からこの1258年まで、ヴェネツィア、フェッラーラ、マントヴァ、クレモナ相互の間でどのような関係が取り結ばれていたのかを調査する必要があると感じるようになった。従って、当初の研究課題と時代的にはずれてしまうが、来年度は13世紀前半のポー川沿岸諸都市の関係をまとめることにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、海外出張ができなかった。また昨年度に新しいコンピュータを購入することができたため、今年度は購入する必要がなかった。
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Research Products
(1 results)