2023 Fiscal Year Research-status Report
13世紀後半北イタリア都市間関係史の動的構築-河川交通・紛争・秩序
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20K01039
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高田 京比子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (40283668)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バッサーノ |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、4月に論文「マルコ・クェリーニの裁定とバッサーノー13世紀後半のヴェネト(イタリア北東部)の小都市をめぐる地域秩序」を『フェネストラ』に発表した。その後、バッサーノとブレンタ川の関係をさらに掘り下げるべく、バッサーノの1259年の条例集を調査し、9月にイタリア中近世史研究会にて「バッサーノの条例集」というタイトルで発表を行った。この発表では、河川交通との関係に限らない、バッサーノの自治のあり方を条例集から明らかにした。思っていたよりも、バッサーノが農業に基礎をおく集落であったこと、しかし近隣のパドヴァ、ヴィチェンツァ、フェルトレなどとの交通は活発に行われていた模様であることが明らかとなった。その後、バッサーノがパドヴァの支配下に入った1295年の条例集の調査も行ったが、ブレンタ川の木材に関する規定が少し詳しくなったほかは、河川交通との関わりを窺わせる規定はあまり見られなかった。また、この二つの条例集の間のバッサーノの史料を刊行した、I documenti del comune di Bassano dal 1259 al 1295にも目を通したが、パドヴァやヴィチェンツァのバッサーノへのさまざまな要求に対して、バッサーノ側がしばしば、「マルコ・クェリーニの裁定」に言及していることなどがわかったものの、この史料集に含まれているバッサーノとヴェネツィアとの関係は限られたものであることも確認できた。したがって、ブレンタ川を通じたヴェネツィアとバッサーノの関係、それがパドヴァ、ヴィチェンツァを含めたヴェネト地方の地域秩序に与えた影響については、すでに公表した論文以上のことは言えないのではないか、と現在思い至っている。バッサーノをめぐる地域秩序については、河川交通にこだわらない視点から、マルコ・クェリーニの裁定の重要性などを含めて研究する方が有益であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
バッサーノとヴェネツィアのブレンタ川を通じた関係をさらに深めて調査しようとして、マルコ・クィリーニの裁定についての論文を執筆した後、バッサーノの条例集の検討に移った。しかし、1259年の条例集にも1295年の条例集にもブレンタ川についての言及は少なく、計画が行き詰まった状態である。また中世イタリアの女性史に関する概説の執筆を依頼されており、そちらの準備に時間を使ったことも科研の研究の遅れに繋がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
13世紀後半のバッサーノをめぐる地域秩序については、マルコ・クェリーニの裁定以外にヴェネツィアの関与はあまり見られず、パドヴァ、ヴィチェンツァを中心とした河川に限らない地域秩序のアプローチが必要だと思われる。ただポー川とヴェネツィアの関係については、13世紀後半に関してまだ深める余地があると考えられるので、今後はそちらの史料を見ていくことにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナの間に海外渡航や出張ができなかったことで繰越額が貯まっている。また現在、刊行史料を中心とした研究にシフトしたため、それほど海外出張の必要性を感じないこと、世界情勢が落ち着かないことなどから、2023年度も海外渡航を見送った。研究自体も遅れていることから、科研の延長申請をする予定であり、時期を見計らって現地調査も兼ねて海外出張などで使用できれば、と思っている。
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