2023 Fiscal Year Research-status Report
A Historical Study on the Continuity and Transformation in US Political Culture in the Late 20th Century
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20K01067
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
梅崎 透 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (30401219)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国史 / 社会運動 / 民主社会主義 / ニューレフト / 新自由主義 / ニューアメリカン・ムーヴメント / ラディカル・ポリティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はようやくニューヨークでの文書館調査が実現した。本研究プロジェクトの中心的な調査対象であるアメリカ民主社会主義者(Democratic Socialists of America: DSA)の組織成立の起源を知るための一次史料収集を目的に、ニューヨーク大学文書館タミメント・コレクションおよび、コロンビア大学図書館アーカイヴでの調査を行った。DSAは、1980年代初頭にアメリカ社会党系の民主社会主義者組織委員会(Democratic Socialist Organizing Committee: DSOC)とニューレフト系のニュー・アメリカン・ムーヴメント(New American Movement: NAM)が合併して成立した。ニューヨーク大学では、民主社会主義者文書ならびにNAM文書を、コロンビア大学では1970年代終わりから80年代にかけてDSAメンバーであったマニング・マラブルの文書を中心に貴重な史料をデジタル映像に収めることができた。この調査によって1960年代のニューレフトの流れをくむNAMからDSAへの人的、思想的流れをつかむと同時に、当時のパンフレットや参加者の著作など、さらなる一次史料の発掘ができた。現在、これらの史料を二次文献と付き合わせつつ分析し、その成果をまとめる作業を行っている。2024年度中に活字化する意向である。あわせて、本プロジェクトに関連して、1970年代のニューヨーク市立大学のオープン・アドミッション制度の起源を分析した報告を行い、また、アメリカの政治文化史における共産党の位置を論じた中山俊宏『アメリカ知識人の共産党』(2023年)を新聞紙上で書評するなどした。昨年度再開したポピュラーソングから政治文化を論じる翻訳プロジェクトは、2024年度前半に刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクト開始から4年目にして初めて現地調査が実現したことからも、史料調査における出遅れが研究分析の進捗度合いに影響を与えている。歴史学的な実証研究においてはその基礎となるプロセスであるため、丁寧に進めていきたい。ただし、史料調査が実現したことで研究対象を位置づける歴史的文脈が明確になったことは大きな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトの最終年度にあたる今年度は、成果をまとめ発表することを主眼に研究を進める。ただし、現地での調査実施がこれまで1度にとどまることから、史料調査が質、量ともに十分とは言いがたい。そのため、2024年度においても夏期休業中に時間を確保し、現地での史料調査を行う。本研究の関心は、1980年代という新自由主義が台頭し、保守化が進んだ時代において、DSAのような左派の運動がどのように再編され、21世紀へと連なるのかであった。その意味で、マニング・マラブル、バーバラ・エプスタインのような知識人が、1970年代のNAMの時代から運動に携わっていたことは運動の人的連続性という点において重要な示唆を与える。また、2024年大統領選において独立候補者として出馬している哲学者のコーネル・ウェストは、民主社会主義者としてDSAの名誉議長の立場にあることからも、合衆国の政治文化において民主社会主義者が依然として一定の影響力をもっていることがわかる。1980年代を中心に、1960年代から2020年代までを俯瞰した米国左派の歴史を分析的に描くことを目指したい。そのためにも、学会や研究会等で報告して他の研究者からのフィードバックを得ると同時に、計画的な公刊を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度中には2度のアメリカ合衆国での調査を計画していたが、急激な円安によって費用がかさみ、1度しか実施できなかった。次年度使用額については、引き続き現地史料調査や文献の収集に充てる。また、また、2023年度補助金は当初予定の目的で支出する。
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Remarks |
共同通信社配信「中山さん、相次ぐ遺作——理念の国の自画像探る」『東奥日報』 2023年7月19日ほか。
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Research Products
(1 results)