2021 Fiscal Year Research-status Report
アジア太平洋戦争期の戦争遺跡における公共考古学的研究
Project/Area Number |
20K01078
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安藤 広道 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (80311158)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 戦争遺跡 / 公共考古学 / 360度映像・画像 / オンラインマップ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度もコロナ禍の影響が大きく、当初予定していた研究協力者参加の戦争遺跡の調査や、研究会、遺跡見学会等の開催などを中止せざるを得なかった。一方で2021年度は、こうした状況下でも進めることのできる調査・研究方法を模索し続けたことにより、大きな成果を得ることができたと考えている。 ひとつは神奈川県座間市での取り組みである。座間市では工事によって発見された高座海軍工廠の工場の基礎について現地踏査を実施できたほか、座間市教育委員会の協力のもと、「Stroly」というオンラインマップのプラットフォームを活用し、地図上に高座海軍工廠芹沢地下壕に関わる調査研究の成果や、Webなどで発信されている市井の声をまとめた「高座海軍工廠第三工場区アーカイブMap」を作成して一般公開した。この成果は座間市のHPでも紹介されており、研究代表者が制作した芹沢地下壕の360度動画もそこで公開されることになった。 もうひとつは鹿児島県鹿屋市での取り組みである。鹿屋市では、研究協力者に高齢者が多いこともあって研究代表者が現地に赴くことを控えざるを得なかったが、一方でオンラインでの打ち合わせ、メールやSNSによる情報共有を進めてきた。そうしたなかで、当初計画の展示やワークショップについては開催を諦め、その代替として「Stroly」を用いたオンラインマップの制作を進めることになった。こちらは2022年度中の公開を目指している。また、第二十二海軍航空廠格納庫の基礎をはじめとする幾つかの遺構についても、オンラインによる連絡を通して調査を実施することができ、その成果の一部が南日本新聞で紹介された。 コロナ禍により研究計画の大幅な見直しが必要となったが、オンラインを主軸とした調査・研究の方向性が見えてきたことにより、本研究の目的である戦争遺跡をめぐる公共考古学的実践を、別のかたちで展開できることが明確になった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により、2020年度に引き続いて、当初予定していた研究協力者参加の戦争遺跡の調査、及び研究会や遺跡見学会等の開催を中止せざるを得なくなった。また、2022年度に、そうした成果に基づいて開催することを計画していた、展示やワークショップも諦めざるを得なくなった。 一方で2021年度は、オンラインを主軸とした調査・研究方法を模索し続けたことで、本研究の目的である戦争遺跡をめぐる公共考古学的実践を、当初計画とは別のかたちで展開できることが明らかになった。具体的には、オンラインによる連絡や情報共有という状況下においても、戦争遺跡の調査研究がある程度実施可能であることが分かってきたほか、オンラインマップを用いた調査・研究成果の公開に見通しが立ち、実際に神奈川県座間市において試作版ながら一般公開するところにまで至ったことは、2021年度における大きな成果となった。 以上の点から、2021年度末までに、2020年度のコロナ禍による研究の遅れを取り戻すところにまで至ったものと評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
オンラインを主軸とした調査研究の方向性が見えてきたとはいえ、本研究の遂行には、依然として研究代表者が研究対象地域に赴き、研究協力者との共同のもとで戦争遺跡の調査研究、及びその成果の活用・公開をめぐる議論を行うことが必要と考えている。そのため、コロナ禍の状況を注視しつつ、現地での調査研究、研究会等の実施に向けての準備を進めることにしたい。 一方で、2021年度の研究によって、オンラインマップのプラットフォームを活用した調査研究成果の公開、及び双方向的な対話の場を開設し得る可能性が見えてきたため、開催の難しくなった展示やワークショップの代替として、2022年度は、鹿児島県鹿屋市を中心に、複数の地域のオンラインマップの制作・公開に注力していくことにする。 なお、2020年度の研究の遅れを取り戻したとはいえ、2022年度もコロナ禍による制限は継続すると予想され、加えて研究成果のアウトプットの場を、展示・ワークショップからオンラインマップに変更したこともあって、研究成果全体を総括するための報告書の刊行までを2022年度内で完了させることが困難な見通しとなった。そのため2022年度に補助事業期間延長承認申請を行い、研究期間を1年延長することを考えている。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最も大きな理由は、戦争遺跡の調査、研究会や遺跡見学会等の開催を中止せざるを得なかったことにある。 2022年度は、コロナ禍の状況を注視しつつ、現地での調査研究実施の可能性を模索する。併せて、研究成果の公開を展示やワークショップからオンラインマップに切り替えたことで、必要となる設備や消耗品の構成、アルバイトの作業内容が変わってきたため、2022年度初めにオンラインマップ制作に向けた設備と作業体制を急いで整えることにする。 なお、2020年度の研究の遅れを取り戻したとはいえ、2022年度もコロナ禍による制限は継続すると予想され、加えて研究成果のアウトプットの場をオンラインマップに変更したこともあって、研究成果全体を総括する報告書刊行までを当該度内で完了させることは困難な見通しとなった。そのため2022年度に補助事業期間延長申請を行い、報告書の刊行を中心とする研究の一部を2023年度に実施することとし、2023年度をもって交付額を全て執行する計画である。
|