2022 Fiscal Year Research-status Report
Transformation process of Yayoi society viewed from the technical deployment of the weapon type stone tool
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20K01081
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
上峯 篤史 南山大学, 人文学部, 准教授 (70609536)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 弥生石器 / 打製石剣 / サヌカイト / 弥生社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、弥生前期における武器形打製石器(打製短剣、中形尖頭器、大形石鏃)の導入過程に表れた社会・経済の変化から、近畿地方における弥生文化の形成過程を読み解くことにある。この目的を達成するため、2022年度は以下の3項目の研究に取り組んだ。 研究項目①:武器形打製石器の製作における石器石材の加熱処理技術の関与を見極めることを射程において、2022年度も、2020年度から取り組んでいる石材の加熱実験と表面痕跡の観察とを継続した。その結果、下呂石(湯ヶ峰流紋岩)における被熱痕跡の識別基準を整えることができた。研究代表者が発掘調査に取り組んでいる湯ヶ峰山頂遺跡において、被熱痕跡を持つ下呂石製遺物を多数検出しており、現在、その観察を続けている最中である。 研究項目②:2020年度から着手した岐阜県湯ヶ峰(下呂石原産地)の研究について、2022年度も、遺跡分布調査、地形・地質調査を継続した。さらに2021年度から開始した湯ヶ峰山頂遺跡の発掘調査を2022年度も継続し、槍先形石器の製作関連資料を多数獲得することに成功した。これらの石器群の年代決定には至っていないが、引き続き、武器形打製石器に相当する可能性を考えながら、石器の観察・図化作業を継続しているところである。また付近で、良好な黒ボク土が堆積する地点を発見したため、層序把握のための試掘調査を実施した。完新世の堆積物であることは確実であり、本研究課題と密接に関連する遺物の出土が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
室内作業の推進と岐阜県下呂市湯ヶ峰における現地調査の実施によって、2022年度の研究目的を概ね達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の2項目の研究を推進する。 研究項目①に関して、湯ヶ峰山頂遺跡の出土遺物(両面加工石器とその製作残滓)の技術論的解析を実施し、そのなかで被熱痕跡がどのように関与するのかを明らかにする。 研究項目②に関して、引き続き湯ヶ峰の発掘調査を継続し、追加資料の獲得を目指す。とりわけ、2022年度に新たに発見した黒ボク土中からの遺物、年代測定試料の獲得を目指す。現地調査の際には、湯ヶ峰山頂付近の地形と火山地質学的形成過程の把握にもつとめ、「武器形石器」等の大型石器の製作に関わる遺跡立地傾向、石材選択傾向を、地史の中で理解することを目指す。
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Causes of Carryover |
物価高騰の影響から、委託分析の一部を断念した。次年度、委託先や提供資料を再検討しての実施を計画している。
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