2021 Fiscal Year Research-status Report
北方交易の展開にともなう擦文文化集団の拡散についての考古学的研究
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20K01084
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Research Institution | Hokkaido Museum |
Principal Investigator |
鈴木 琢也 北海道博物館, 研究部, 学芸主幹 (40342729)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 擦文文化 / 擦文土器 / 中世陶磁器 / 須恵器 / 鉄製品 / 銅鋺 / 北海道 / 北方四島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、北海道を中心に東北地方、千島列島(北方四島)、サハリンを含めた北方地域における擦文文化後半期の物流交易の展開と集団の拡散を明らかにし、擦文文化期からアイヌ文化期へと移行する時期の不明瞭な物流経済の実態を明確にすることにある。 研究実施計画は、①北海道における12~13世紀の本州産陶磁器、鉄製品、漆器の調査と集成・検討、②東北地方における11~12世紀の擦文土器の調査と集成・検討、③千島列島(北方四島)、サハリンにおける擦文文化期の遺跡、擦文土器の調査と検討、④本州産陶陶磁器、須恵器、擦文土器の胎土分析、鉄製品の成分分析による生産地の検討 ⑤12~13世紀の北方地域と本州の物流交易に関連する文献史料(記述)の集成・検討であり、令和3年度の研究は、実施計画にそって次のとおり実施した。 ①については、道央部の札幌市、恵庭市、千歳市、厚真町を中心に陶磁器、鉄製品、銅鋺の調査、道東部の網走市、羅臼町を中心に鉄製品の調査を実施するとともに、既存の報告書等を参照し集成・検討作業を進めた。②については、青森県の青森市、つがる市、八戸市で擦文土器や関連資料の調査を行ったほか、岩手県平泉町出土の擦文土器の調査を実施した。③については、新型コロナウイルス感染拡大の影響により北方四島における現地調査は実施できなかったが、これまでの調査成果や既存の報告書等をもとに集成・検討作業を進めた。④については、秋田県の秋田市、男鹿市、大仙市の博物館、埋蔵文化財センター等で生産地窯跡出土須恵器の胎土分析調査を実施し、一昨年度に実施した消費地北海道出土の須恵器の胎土分析結果との比較検討を行った。⑤については、刊行史料を中心に北方地域と本州の物流交易に関連する記述の集成を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①北海道における12~13世紀の本州産陶磁器、鉄製品、漆器の調査は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により現地調査を実施できなかった地域もあるが、近隣の道央部を中心に重点的に調査を進め、概ね順調に研究を進めることができた。②東北地方における11~12世紀の擦文土器の調査は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により対象地域や調査期間を縮小して実施したため、研究の進捗が若干遅れている状況にある。③千島列島(北方四島)、サハリンにおける擦文文化期の遺跡、擦文土器の調査は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により実施できなかったため、研究の進捗が遅れている状況にある。④本州産陶磁器、須恵器、擦文土器の胎土分析、鉄製品の成分分析については、秋田県での生産地窯跡出土須恵器の胎土分析を実施し概ね順調に研究を進めることができた。⑤12~13世紀の北方地域と本州の物流交易に関連する文献史料(記述)の集成は、概ね計画どおり進めることができた。 上記のように、新型コロナウイルス感染拡大の影響により特に遠隔地での現地調査が充分に実施できず、新たな資料を確認・検討できなかった点で研究は遅延している。しかし、遠隔地での現地調査に要する時間を、近隣での現地調査や、これまでの調査成果の整理や既存の報告書、刊行史料等の参照にあて、基礎的な集成作業等を進めることはできた。これらをふまえて総合的に判断した結果、研究計画全体としては進捗に若干の遅れがでている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大の状況及びロシアとの外交関係により、おそらく次年度及び研究期間中の千島列島(北方四島)、サハリンの現地調査を実施することは難しいと考えられる。したがって、研究計画を変更し、③千島列島(北方四島)、サハリンの擦文文化期の遺跡、擦文土器の調査については、北海道内の博物館等に収蔵されている太平洋戦争以前に収集された資料の調査や、既存の報告書に記載される遺跡・資料情報の再検討により実施する。 ①北海道における12~13世紀の本州産陶磁器、鉄製品、漆器の調査、②東北地方における11~12世紀の擦文土器の調査、④本州産須恵器の胎土分析調査については、新型コロナウイルス感染拡大の状況を注視しつつ、調査の時期や地域を判断し調査回数を減らすなどの対策を講じたうえで実施する。また、感染状況によっては、東北地方での調査を削減し、北海道内での調査を重点的に行うような計画に変更することもあり得る。その場合、東北地方の資料に関する研究については、これまでの調査成果や既存の報告書等をもとに進めることとする。 研究計画全体の方針として、今年度以降は新型コロナウイルス感染拡大状況やロシアとの外交関係をふまえ、千島列島(北方四島)、サハリンなど遠隔地での調査を見送るとともに、その経費を北海道内や東北地方での調査にあて、重点的に研究を進め基礎的なデータの蓄積をはかる方策にシフトすることとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、北方四島やサハリンでの現地調査を実施できず、東北地方調査についても実施回数を削減せざるおえない状況にあったため、調査旅費、調査に伴うその他経費(借上車費用、ガソリン費用など)、調査に伴う消耗品費などを執行できず、次年度使用額が生じた。 現在の感染状況やロシアとの外交関係からみて、次年度も北方四島やサハリンの調査は実施できないと予想される。そのため、北方四島やサハリンの調査に使用しようと計画していた経費について、次年度使用額(今年度残額)と翌年度分請求助成金をあわせて、北海道内と東北地方での調査旅費に充当し基礎的な調査を重点的に進める。また、その経費をこれまでの調査成果を再整理するための人件費・備品費・消耗品費、報告書・刊行史料の購入費にも充当して、本研究の基礎となる資・史料の集成作業を重点的に進める計画である。
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Research Products
(4 results)