2022 Fiscal Year Research-status Report
A comprehensive study of Buried Cultural Properties (archaeological resource) Centres in Japan
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20K01085
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
岡村 勝行 一般財団法人大阪市文化財協会, 学芸部門, 事務所長 (70344356)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 埋蔵文化財センター / 考古遺産マネジメント / 持続可能な考古学 / パブリック・アーケオロジー / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで収集した約200の「埋蔵文化財センター」のデータ分析、累計化を進めた。このうち、施設は145あり、運営別でみると都道府県21、市町村98、財団21、大学5であり、展示施設を備える施設は136(94%)に及び、地域の遺跡情報の日常的な受発信、学習の場となっていることが明らかになった。今年度は、北陸(石川県、金沢市、小松市、南砺市、富山県、富山市、新潟県、新潟市、上越市)、東北(青森県、秋田県、田舎館、八戸市、一戸市、滝沢市、盛岡市、奥州市、多賀城市、南相馬市)の20 施設について、現地調査を含む、実態調査、ヒヤリングを行った。いずれも展示施設を完備し、なかでも石川、富山、新潟の県立施設は歴史博物館と遜色のない規模、内容を備えていた。また、近年に設置あるいは改修された埋蔵文化財センターでは、資料整理作業のシースルー化が一般化しており、博物館より、より身近な地域史学習の場として、小中学校の総合的学習などに活用されている状況も確認できた。 海外における開発に伴う事前発掘調査、調査成果、出土資料の公開状況を調査するため、第8回世界考古学会議プラハ大会に参加し、英国、フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデンの研究者にヒヤリングを行った。日本の「埋蔵文化財センター」のように開かれた施設はまだ確認できていない。遺跡調査が完全民営化したイングランドの場合、民間調査機関は調査・報告書作成が業務であり、教育活動も行うものの、基本、展示施設を持たない。日常的に市民に開かれた場は地域博物館に限られ、出土資料・遺跡情報の移管・共有が課題となっている。 急増する開発を前に「文化財(の保存と活用)」のもと、70年以降整備された日本の考古遺産マネジメント、90年代以降、「考古学」のもと民営化の影響を受けながら発展した、欧州のそれとの違いを、「埋蔵文化財センター」の活動を鍵に視覚化できる目処を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
調査当初、最終年度は埋蔵文化財センターの全体像、国際的な特質について、過去2年間のデータ分析のもとに研究成果を国内外に提示し、修正、追加を経て、完成させる計画であった。しかしながら、研究期間の3年間、コロナ禍と重なり、特に1、2年目は外出規制、調査施設の休館、担当者の在宅勤務などのため、実地調査かなわず、まだその遅延が調査研究の全般に影響を及ぼしている現状がある。 これまで資料調査については、文献、ウェブ、問い合わせにより、ほぼ全国を網羅する約200の「埋蔵文化財センター」の基礎的な資料収集は完了した。このうち近畿、北陸、東北地方については、2022年度の実地調査・ヒヤリングにより、着実なデータを得ることができたが、そのほかの地域については、データの精粗が著しく、資料全体の標準化がまだ不十分な段階にとどまり、補完する必要がある。 海外の事例調査については、2022年7月に対面で開催された世界考古学会議(WAC)に参加し、日本の開発に伴う発掘調査の現状、出土資料の公開について、直接、情報提供を行えたことにより、英国、フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデンなど欧州主要国の研究者から、それぞれの国の関係情報を随時寄せてもらい、現在その分析を進めているところである。 新型コロナ感染症は2023年度に入り、収束に向かっており、実地調査が可能な状況を迎えている。より実態を正確に踏まえた情報、データを入手、補完するべく、ヒヤリング、主要施設の調査を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
申請研究計画では、国内の埋蔵文化財センターの全体像を視覚化するには、全体の2割に当たる40事例の実地調査が最低限必要とした。現状では、四国、九州、北海道地域の事例が欠落しており、その主要な埋蔵文化財センターの実態調査を行い、データベースを補完し、類型化を進める。調査施設においてヒヤリングを進めるうち、文化庁補助金が埋蔵文化財センターの設置、修復、埋蔵文化財の活用の推進に大きな影響を与えていることが判明した。約半世紀にわたる、国の関与、役割を調査し、埋蔵文化財センターの変遷との関係を調査する。また、近年、自治体が発表した『文化財保存活用大綱』(都道府県)、『文化財保存活用計画』(市町村)を分析し、埋蔵文化財センターの位置付け、地域の(考古・歴史・遺跡)博物館、郷土資料館、歴史民俗資料館との関係を明らかにする。 海外の事例について、欧州では英国、フランス、オランダ、スウェーデン、東アジアでは韓国の研究者の協力を得つつ、考古遺産マネジメント関係機関の分析、関係論文調査を進め、全般的な状況・課題の把握のうえ、類型化を試みる。さらに各国の代表的な機関・施設について、緊急調査で得られた出土資料の管理、活用、地域の博物館との関係に焦点をあて、具体的なケーススタディとして資料化する。 以上の調査研究は国内外の実地調査によって実質化・実体化されることが不可欠であり、また、研究の活性のためには専門家の招聘や研究交流、学会・研究会の発表が望ましい。感染症が収束に向かい、社会活動が通常化しつつある現在、当初の計画に沿い、この間不十分であった現地調査、関係者との意見交換を加速化し、当初目標である「埋蔵文化財センター」の全体像、国際的な位置付け、また、日本の考古遺産マネジメントの特質を提示する。
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Causes of Carryover |
2020年度に開始した本研究は、2022年度もほぼ一年間、新型コロナ感染症の影響下にあり、日々の生活への制約も小さくなく、研究環境を十分整えることができなかった。調査研究について、各地の埋蔵文化財センターの実地調査、海外研究者の招聘は叶わず、国内・国際学会での発表などは一部を除き、中止あるいはオンライン開催となった。今後の計画は、感染症の行方によるものの、収束とともに、社会活動は通常化の傾向にあり、過年度に実施できなかった地域への実地調査、国際学会への参加、海外研究者の招聘など旅費を中心に執行を行う。
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Research Products
(3 results)