2020 Fiscal Year Research-status Report
人類史における国家形成プロセスの解明にむけた実証体系の基盤構築
Project/Area Number |
20K01092
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
有松 唯 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 准教授 (60732112)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国家形成 / 都市形成 / 二次国家形成 / 社会進化 / 発展経路 / 古代ペルシャ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は広島大学文学部に所蔵されている研究対象地域由来の考古資料について、整理ならびに基礎データの出版に向けた作業を進めた。なかでも発掘調査が実施された遺跡について、所定の登録作業を完了するはこびとなった。また、発掘調査がなされたものの、その事実自体が未報告であった遺跡について、調査時のデータや記録のアーカイブを整理し、調査区の全貌や層序、検出遺構などを明らかにすることができた。当該遺跡の出土資料の学術的意義は複数の成果でもって既に実証されている。調査時の基本的な情報を加味することで、研究対象地域に関する基礎データとして、出版することが可能になった。 地域間の比較研究による人類史における社会進化モデルの再構築に着手した。本研究でテーマとしている古代国家形成は、古典的な社会進化のモデルでは、古代における知識や技術の蓄積の極致、その古代における到達点として長らく位置づけられてきた。同時に、こうした古代国家の位置を含む人類史観について、人文社会科学の様々な分野が払拭の試みを積み重ねてきた。比較研究においては、そうした社会進化モデルの範型となってきた文明の「中心」地域における古代都市ならびに古代国家、そしてそれらの形成プロセスを含む社会進化について、議論を整理した上で問題化を試みた。本研究の対象地域も含む西アジアについて、南アジアや東アジアなどとの比較に加え、地域内でも地政学的な地域分類を行うことにより、従来は範型外として「周辺」あるいは「亜周辺」と位置付けられてきた地域における発展経路や都市国家の在り方こそ、一般化の対象として有効である展望を得た。その上で、本研究で対象とする古代ペルシャの国家形成の重要性を再確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では感染症の感染拡大により、研究対象地域への渡航ならびに現地調査の実施が困難な状況が続いていることで、おおきな影響を受けた。研究対象資料もおおむね現地からの持ち出しや搬送が禁じられていることから、それらをもとにした研究の進展も妨げられた。また、国内の移動や所属組織の立ち入りにも制限が伴ったため、国内所蔵資料についても、予定していた他組織の専門家との共同が妨げられる状態に対応せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も引き続き、感染症の拡大に伴い、対象地域での調査の実施は困難である可能性が高い。そのため、当初の計画を変更し、下記活動に力点を置いて研究を推進していく。 広島大学所蔵資料の整理・出版ならびに調査研究を進展させる。2020年度に当該資料の整理が当初の計画以上に進み、且つ想定していた以上の見解が得られた部分もあるため、研究計画期間内に主要な部分を出版公開すると同時に、得られた見解を成果とすべく、注力していく。それにより、将来的に現地調査を再開する場合にも、現状より具体的な見通しをもって臨むことができると考える。 また、比較研究の本格化を目論む。2021年度内に上記比較研究で得られた現状の知見ならびに見通しについては、専門誌の特集という形で出版予定である。それをもとにした研究会を、他地域の専門家と共同で定期的に実施する。また、古代都市形成ならびに古代国家形成の理論研究のレビューならびに問題化もそれぞれ論稿として出版し、広く議論を喚起する。 とはいえ、情勢さえ許せば、直ちに現地調査に着手する。また、対象地域からのサンプルの輸送手続きを確認中であり、実現すれば対象地域の試料を日本国内で分析することにより、現地調査に関連するところの研究を進捗させるべく務めていく予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた現地調査が感染症の拡大により今年度実施できなかったため、そのために計上していた諸経費を次年度に回さざるを得なくなったため。
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