2020 Fiscal Year Research-status Report

環太平洋における戦跡水中文化遺産の保護体制確立に向けた基礎的研究

Research Project

Project/Area Number	20K01093
Research Institution	Kyushu University
Principal Investigator	中西裕見子九州大学, 比較社会文化研究院, 共同研究者 (10845754)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	菅浩伸九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (20294390) 片桐千亜紀九州大学, 比較社会文化研究院, 共同研究者 (70804730)
Project Period (FY)	2020-04-01 – 2023-03-31
Keywords	第二次世界大戦 / 太平洋 / 水中文化遺産 / 潜水調査
Outline of Annual Research Achievements	令和２年度はチューク諸島での第二次世界大戦にかかる水中文化遺産について、当初予定していた現地での潜水調査が、新型コロナウイルス感染症に起因する海外渡航制限のため、実施できなかった。そのため、次年度以降の調査に向けての打ち合わせを、国内でズーム等を用いて実施した。並行して、現地調査に向けた資料収集及び調査を実施した。現地でこれまで関連する調査を行ったことがある研究者、研究機関等と情報交換を行い、必要な備品等を購入し、次年度以降の現地調査への準備を行なった。また、第二次世界大戦の環太平洋の海戦最終段階である沖縄戦の物証である水中文化遺産、USSエモンズ（沖縄県古宇利島沖）について、その詳細な調査に基づき、戦跡の意義と歴史観への影響を議論する論文を、研究分担者らとともに、International Journal of Nautical Archaeology　へ提出し、現在査読中である。論文執筆をする中でも、研究分担者らと比較研究の対象となる戦跡水中文化遺産である沖縄の事例について意見交換をする過程で、チューク諸島での調査計画を立てているところである。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 4: Progress in research has been delayed. Reason 令和２年度はチューク環礁での第二次世界大戦にかかる水中文化遺産について、当初予定していた現地での潜水調査は、新型コロナウイルス感染症に起因する海外渡航制限のため、実施できなかった。現在の新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みると、令和３年の前半期に現地調査を実施することは不可能であろう。しかしながら、第二次世界大戦の環太平洋の海戦最終段階である沖縄戦の物証である水中文化遺産、USSエモンズ（沖縄県古宇利島沖）について、その詳細な調査に基づき、戦跡の意義と歴史観への影響を議論する論文を、研究分担者らと執筆した。本研究で主たる調査対象としているチューク諸島の戦跡との比較資料についての検討を重ねることができた。また、チューク環礁においても水中文化遺産の保護の仕組みづくりを目指すため、地元ダイバーとともに普及啓発活動を行うモデルケースとして、日本国内の水中文化遺産（石垣島屋良部沖）を例として、民間潜水団体NAUI Enterprises Co. Ltd.の協力のもと、スペシャルティダイバーコースの設立に向けた活動と、教材の作成を行った。チューク環礁でも、ダイバーに対する教育を通して、第二次世界大戦に係る水中文化遺産の保護と観光利用の後押しを進める予定であり、そのための方法論を確立することができた。
Strategy for Future Research Activity	現在の新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みると、令和３年度の前半期に現地調査を実施することは不可能であろう。状況を見ながら、可能であれば令和３年度の後半期にチューク諸島での潜水調査を実施するために、調査計画を立てる。また、環太平洋地域の海戦の終末である沖縄戦について、日本の神風特別攻撃隊に焦点を当てた４館合同展示企画（九州大学浅海底フロンティア研究センター、大刀洗平和記念館、知覧特攻平和会館、沖縄県立埋蔵文化財センター）においてUSSエモンズの調査に基づいたパネル展示に協力を行い、戦跡水中文化遺産の普及啓発活動を実施しながら、その手法と意義についての研究をさらに深化させる。６月には、環太平洋の第二次世界大戦にかかる水中文化遺産について、講演会を行う予定である。
Causes of Carryover	令和２年度は新型コロナウイルス感染症による海外渡航制限のため、チューク諸島での現地調査が実施できなかった。また、国内における調査や打ち合わせについても、移動制限がある期間が多くあったため、予定をキャンセルしたことがあった。そのため旅費、調査費の支出が少ない。令和３年度は、同感染症の状況を鑑みながらではあるが、現地での潜水調査を実施する予定。そのための、準備、必要物品の調達、旅費、潜水調査費において当研究費を使用する。