2021 Fiscal Year Research-status Report
中央アナトリアにおける銅石器~前期青銅器時代の文化動態
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20K01097
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
紺谷 亮一 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (50441473)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中央アナトリア / キュルテペ / 後期後期銅石器時代 / 前期青銅器時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①銅石器~前期青銅器時代の遺跡空間データベースの作成、②中央アナトリアに位置するキュルテペ遺跡の発掘調査、③得られた資料の編年的研究および地域間交流の研究、を行うことで、中央アナトリアにおける銅石器~前期青銅器時代の物質文化を明らかにし、その編年および文化動態を明らかにすることを目的としている。これにより、アナトリアにおける都市とはどのようなものであったのかという問題にアプローチすることが可能となると考える。2021年度では、上記①遺跡空間データベースの作成および②キュルテペ遺跡の発掘調査を行った。 1.遺跡空間データベースの作成:これまで紙ベースで出版されたデータベースのデータ化を行った。当初予定では中央アナトリアのみが対象であったが、それ以外の地域についても必要と判断してデータ化を試み、前期青銅器時代を対象に行った。 2.キュルテペ遺跡の発掘調査:テル中央部に設定したトレンチにおいて、東西方向に伸びるジグザグプランの大型建築址を検出した。当該建築址は、幅1.5mを超える日干しレンガから構成され、璧体は高い所では、床面から2mまで残存していた。出土土器には、中央アナトリアにおいて後期銅石器時代から前期青銅器時代I期に特徴的な遺物である赤黒土器や表面に白色刻文が施された黒色磨研土器等が認められた。年代測定を行った結果、BC3300頃であることが明らかになり、後期銅石器時代の遺構であることが判明した。 本研究の成果については、学会・論文で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の予定は、①遺跡空間データベースの構築と②キュルテペ遺跡の発掘調査であった。①については、当初予定を大幅に上回るアナトリア全土の銅石器時代遺跡のデータ化に目処がつきつつあり、前期青銅器時代遺跡のデータ化も進めた。 ②については、コロナ禍の影響が心配されたが、発掘調査を行うことができた。しかし、日本・トルコ両国の参加メンバーが一部参加できなかったことや、発掘人員を当初予定通り集めることが困難となったなど、十分な期間や面積を調査することがかなわなかった。そのため、発掘調査がメインとなり、整理作業の時間が短縮されたため、遺物研究の遅れがある。 しかし、それでも中央トレンチにおいて後期銅石器時代の大型建築址を検出できたことは、当該時期の研究にとって大きな成果といえ、学会等において発表をおこなった。 以上、①は当初よりも進み、②については期間・規模を縮小せざるを得なかったが成果は得ることができたため、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、上半期にデータベースの構築を完了させる。発掘調査ではテル中央部に設定したトレンチの拡張および掘り下げを行う。これにより、後期銅石器時代の大型建築址の全貌を明らかにするとともに、それ以前の物質文化の状況を明らかにする。得られた資料は考古学的な分析を行いつつ、年代測定を実施し年代を得る。資料の編年的位置付けおよび広域交流を裏付ける資料の抽出などを行い、当該時期の文化動態の実態を明らかにする。 なお、渡航が困難な状況な場合には、国内で実施できる活動を優先させる。キュルテペ遺跡から得られた資料に関しては、一部の試料を除いて必要なデータはすでに手元にあり、国内で研究を実施し、成果を発表していく体制は整えられているといえる。
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Causes of Carryover |
2021年度もコロナ渦の影響を大きく受けた状況となった。まず本科研から支出する予定だった協力者の参加が不可となった。また、現地においてもコロナの影響は大きく、想定した人数の現地作業員を集めることができなかった。こうした理由により、当初想定していた渡航費、滞在費を使用することができず大きな繰り越しが生じることとなった。 2022年度も同様な状況が想定されるが、1)研究代表者が帰国した後も現地調査員と綿密な情報交換を行いながらリモートによる発掘調査を行う、2)現地から多くの年代測定用試料を日本に持ち帰り分析数を増やす、3)遺跡北・西トレンチの調査に関する報告書(欧米雑誌へ投稿予定)を完成させる等に執行することで、研究成果を得る。
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Research Products
(4 results)