2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K01098
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
武末 純一 福岡大学, 公私立大学の部局等, 研究特任教授 (80248533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 達朗 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (00582652)
村田 裕一 山口大学, 人文学部, 准教授 (70263746)
古澤 義久 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40880711)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 石硯・研石 / 海村 / 弥生時代・古墳時代 / 天秤権・棹秤権 / 使用痕跡 / 砥石 / 石質 / 十進法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はコロナ禍のためにほとんど資料調査ができず、石硯・研石は、わずかに第2回板石硯・研石研究会で北部九州の関係資料を実見できた程度である。韓国からの研究員の招へいもできなかった。 研究活動は過去の研究資料の見直しがほとんどで、武末は弥生時代における文字使用の総論と天秤権研究の現在の状況をそれぞれ公にした。2020年秋には研究分担者の村田氏と打ち合わせを重ねて石硯・研石の細部名称や現在の研究状況をどう打破するかを探った。また、2021年2月には研究代表者と研究分担者で構成するオンライン会議を開いて今後の活動方針を議論し、石硯・研石の使用痕を確定して砥石とどう区別できるのか、現在石硯・研石とされている資料に砥石などがかなり含まれているのではないのかに焦点を絞る方針を固めた。 砥石の検討では予備的に福岡県小郡市一ノ口遺跡の弥生時代前期から中期初頭の砥石を調査したところ、石硯にしかないとされる円運動の使用痕の存在を確認した。福岡県行橋市下稗田遺跡の石硯候補資料でも、砥石の使用痕跡を確認している。 そうした中で、弥生時代の権の研究では進展があった。須玖遺跡群で出土した石製天秤権(円筒権)では、これまで基準質量の3倍、6倍、20倍、30倍の円筒権が判明している。今年度はこれに加えて、1989年の須玖岡本遺跡岡本地区5次調査の発掘で、基準質量の10倍の円筒権が出土していたことを新たに明らかにできた。この資料は縦に面取りして作り、質量も誤差の範囲内に収まって、円筒権でよい。形は裏面にやや平坦面があって、横断面は楕円形をなすため中期前半まで古くなる可能性をもつ。この10倍の権の確認で、弥生時代における十進法使用の可能性がさらに高まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今回の研究では石硯・研石の候補資料を実際に観察・実測して、研究代表者・研究分担者が一緒に使用痕や石質を検討することが一番大事なのに、国立大学の教員は出張に関する規制が極めて厳しくて、それがほとんどできなかった。特に東京大学での楽浪土城出土石硯・研石の調査が、緊急事態宣言などで全く実施できなかったのが致命的であり、研究が遅れる原因となった
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍が収まり次第、まず東京大学の楽浪土城出土石硯・研石を研究代表者・研究分担者全員で観察・検討し、その成果を共有する。そうして得られた共通認識を基盤に各地の資料を実見・検討し、砥石か否かを判別する。韓国から研究者を招へいするとともに、韓国のの資料を調査する。一定の成果が得られた段階で中間報告を公表し、広く研究者間の理解を得ながら、できる限り弥生・古墳時代石硯・研石候補資料の再検討を進めて最終報告書をまとめる。権に関しては、弥生時代の十進法使用の傍証資料を鉄素材や土器に残された文様から検討する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で資料調査がほとんどできず、学生が大学に入構できないためアルバイトも雇えなかった。また、韓国の研究者も招聘できず、ほとんどの研究活動を2021年度に繰り越さざるを得なかった。
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Research Products
(6 results)