2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K01115
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
杉岡 奈穂子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (00609167)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 絵画表現 / 多様性 / 彩色技法 / 微細構造観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、染色・絵画文化財で用いられている彩色材料のもつある特殊性が、絵画表現あるいは技法にどのような効果をもたらすのか、材料科学的側面から明らかにするものである。特に、染料と顔料を組合わせて用いることで表現の多様性が生まれると同時に、下地との相互作用による発色効果や退色の抑制効果なども得られる。透過電子顕微鏡等の先端的分析手法で彩色材料の物性を蓄積し、わが国の美術史の基盤となる時代の色材・素材を明らかにする。これらの彩色材料の環境実験を進めて構造変化を解析することにより、染料と顔料を組合わせて用いた場合の発色のメカニズムおよび退色・劣化挙動から保存性を評価する。将来的には、先端科学、特に材料科学の視点から「物質・材料」として絵画材料を解明し、保存・修復のための基礎データだけでなく、芸術の創造、美の認識に関する先端科学分野にも役立てたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ肺炎による制限のため、実験装置を用いた研究が困難であったため、本年度は文献調査を主として行い、研究計画に変更が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまでの成果を活かした新たな課題に取り組む研究、これらに伴う新しい研究手法の開発などから、染色・絵画技法の表現効果を生み出す彩色材料のナノ特性について新たな知見を得る。 特に、顔料と染料を組合わせる彩色表現について、微細構造観察により絵画の製作工程を通して発色のメカニズムを明らかにし、絵画技法を生み出す彩色材料の特性を得る。さらに、下地の構造と併せた相互作用による表現効果および劣化挙動についても検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ肺炎による制限のため、実験装置を用いた研究が困難であったため、初年度は文献調査を主として行い、研究計画に変更が生じた。 今年度も、社会的情勢を鑑みながら、当初の研究計画へ移行できるように、材料分析を中心とした実験を行っていく計画である。
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