2021 Fiscal Year Research-status Report
Practical space-time accessibility measures considering individuals' mental map and decision-making process
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20K01136
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| Research Institution | Hirosaki University |
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Principal Investigator |
増山 篤 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (50322079)
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| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 時空間アクセシビリティ / 時間的制約 / 段階的意思決定 / 認知地図 / ロジットモデル |
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| Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、まず、個人の認知・判断プロセスを考慮した上で、行動・意識データからキャリブレーション可能な時空間アクセシビリティ指標を導出することを目的とする。また、ケーススタディを通じて、導出した指標の有用性や特徴を明らかにすることを目的とする。
一定の時間予算内に私たちが都市施設・活動機会に赴く場合、まずは、そもそもどこかへ赴くかどうかを判断し、次に、具体的な行き先を決定すると考えられる。こうした段階的意思決定を考慮し、ネスティドロジットモデルに基づく時空間アクセシビリティ指標を理論的に導出した。この指標は、一般的によく知られた離散選択モデルに基づくものであるため、広く普及している統計ソフトウェアによってキャリブレーション可能である。この研究では、ある時空間制約シナリオの下でどのような行動を取るかを尋ねる選好意識調査を実施し、そのデータを用いて、導出した指標のパラメータ推定を実施した。その結果、実際に段階的意思決定が行われており、時間的制約下でのアクセシビリティを捉える上での導出指標の妥当性が示された。
一般に、居住地選択においてアクセシビリティが少なからず関わることから、段階的意思決定を考慮した指標について、人口・土地利用データと比較・照合する分析を行うこととした。そのためには、共通する時空間制約条件を想定し、時空間プリズムなどの時間地理学概念を操作化し、さまざま異なる場所毎に時空間アクセシビリティの指標値を求める必要がある。そこで、時間地理学概念を操作化する手続きを計算機実装し、ここで目的とする分析を実際に行った。
ここまでは、個人の認知・判断プロセスの中でも段階的意思決定に着目してきたが、認知地図を考慮した時空間アクセシビリティ指標についても検討している。具体的には、理論的検討およびデータ収集が現在進行中である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、段階的意思決定を考慮した時空間アクセシビリティ指標の理論的導出とそのキャリブレーション結果をまとめ、国内の地理情報科学専門誌に投稿していたが、いくつかの修正の後、今年度、掲載・出版された。
段階的意思決定を考慮した指標の空間分布と人口・土地利用データを比較・照合する分析を進めるにあたり、そもそも、時空間アクセシビリティ指標の空間分布の計算の方法論および実践的知見が確立していないことが明らかとなった。そこで、経路ネットワークに関するオープンデータの入手方法の検討、オープンソースプログラミング言語によって時間地理学概念を操作化するコード作成、を行った。その結果、ハードウェア以外の経済的コストをかけることなく、時間予算内に到達可能な施設・機会の特定、それぞれにおける滞在可能時間などが計算可能であり、さらに、どのような種類の時空間アクセシビリティ指標も算出可能であることが明らかとなった。この研究では、大学生の帰り道における買い物機会への時空間アクセシビリティと彼／彼女らの居住地との関係を分析したが、学術的成果として耐えるような関係性は見出せなかった。しかしながら、その過程で明らかとなったオープンデータ、オープンソース言語の利活用性を2本の研究ノートとしてまとめて投稿し、いずれも受理され、1本はすでに掲載されている。
一方で、認知地図を考慮した時空間アクセシビリティについても検討を進めてきたが、これについては、前進した部分と後戻りした部分があり、トータルで足踏み状態にある。まず、大学生に日常生活を題材とし、アルバイト先などのアンカーとなる場所も含めた実行動データを収集し、これを将来的に利用する見通しを得た。ただし、時間的制約、認知的理由の順で選択肢が形成されるというモデルに基づく指標を考えていたが、モデル推定結果の安定性について検討する必要が明らかになった。
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| Strategy for Future Research Activity |
上述のように、時空間アクセシビリティ指標の空間分布の計算については、方法論や実践的知見が確立していない。一方で、このような計算およびその効率的な実行が各分野で求められている。例えば、健康地理学では、診察時間と医療サービス需要のミスマッチの有無に関心を寄せており、それゆえ、ニーズが存在する。そこで、特にその計算的側面に注目した上で先行研究の精査を行い、時空間アクセシビリティの空間分布にかかる計算量やその計算機実装を論じた論文を投稿・発表していく予定である。
これまた上述のように、認知地図を考慮した時空間アクセシビリティについては、そもそも、指標の定式化段階から再検討する必要がある可能性がある。この点については、これまで理論的検討を進めてきた方向性に固執せず、より単純に、パラメータを含むモデルに依らない方向性があるのではないかと考えている。具体的には、アンカーおよび訪問施設・機会の位置に関するデータに基づき、時間予算内に到達可能な範囲、認知地図に相当するアクティビティスペースをそれぞれ確定し、その面積比や内部に存在する施設・機会数比といった指標を利用・解釈するという方向性を考えている。この方向性で進めるとなったとき、すでに学生の日常生活に関するデータを得ているが、スマートフォンのGPS機能を用いてより精度の高いデータを得る方法、各種範囲を一般化された凸包によって確定する方法などの利用が考えられる。これら手法・ツールのそれぞれについて使用法等を令和3年度中にある程度把握しているので、これまでとは異なるアプローチから、認知地図を考慮した上で時空間アクセシビリティを計量に捉える研究を進めていきたい。
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| Causes of Carryover |
この研究では、外出行動に関するデータ収集のための費用、および、その整理のための人件費を計上していた。しかし、令和2年度は、新型コロナウイルスの流行により、そもそも人々の外出行動が大きく制限され、その結果として、少なからぬ金額を繰り越すこととなった。令和3年度に、研究成果の公表などに費用を要したため、令和2年度の繰越額をかなり使用したものの、依然としていくらかの次年度使用額が生ずることとなった。現在は、新型コロナウイルスも弱毒化しつつあり、厳しい外出制限などが課せられる可能性は著しく低くなったことから、遅ればせながらも、令和2年度に計画していたデータ取得等に、次年度使用額を充てる予定である。
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